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文字数 1,442文字
丘と林を越え、その小さな村に着くまでに空は雲で覆われて、雨が降り始めました。
テスには雨を
すぐにずぶ濡れになり、水は服の表面から中へ浸透していき、体を冷やしました。
そのうちに、村の外れの池にたどり着きました。
池と村は言葉つかいが立てた石碑と結界で守られています。
雨で波打つ池の
雨が
テスが立ち上がると、娘は何か話しかけてこようとしました。テスは目をそらして立ち上がりました。
娘に背を向けるとき、テスの目に天を黒く覆う
城壁に囲まれた街へと下りていきます。
とても答える気になれません。
娘を見ようという気も起きません。
テスは立ち去ろうとしました。
娘の優しさが本物なのか、確かめてみたくなったのです。
娘はサラと名乗りました。
見た目にも純朴な娘で、サラは池を迂回して言葉通りにテスを村へと導きました。
野外に人はいませんでしたが、畜舎からは物音や
それらの目は、この世界の多くの人々がしている目でした。
雨と嫌悪の視線を浴びながら、村の集会所にたどり着きました。
およそ働き口などなさそうな小さな村です。
その中央に位置する、漆喰で作られた円柱の建物が集会所です。
明かりはありません。
中は
排気用の管がストーブから天井に伸びています。
サラは部屋の隅からスコップで石炭を運んできて、ストーブに投じ、それから椅子を一脚持ってきて、丁寧に右手で示しました。
何人かは生き残るかもしれません。
でも何人かは死にます。
化生によって死ぬのではなく、テスによって死ぬのです。
テスを追ってここに来たのですから。
そしてテスが、危機を知らせることをせず、一人で逃げたのですから。
サラが手を伸ばして、テスのストールを外そうとしました。
テスは首を横に振りました。
髪から雨の
サラの手が動きを止めました。
テスが目を上げてサラの視線の先を辿ると、テスの両手首に止血のために巻かれた、血で濡れた布を見ていました。
サラが恐れを込めて尋ねます。