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文字数 1,762文字
風を血除けに使ったものの、テスの髪にも、顔にも、灰白色のマントにも、点々と血がついていました。
テスはその姿で教会堂に戻りました。
アルカディエーラは前庭に立ち、聖典を読んでいました。
いくらなんでも言うことが極端です。
テスは困惑します。
本を閉じ、アルカディエーラは一歩、二歩、三歩と前に出ました。
そしてテスに背を向けて、語り始めました。
何かがテスの深いところに沈む記憶を撫でました。
その感触に、テスは誰にも見られず目を見開きます。
それで、父も、死産だったことにしようと家令に言って、捨ててこさせたんです。
悪魔封じの印を頬に描いて。
生きている内に拾われれば、血塗られた手の卑しい者たちが、その子を殺し屋として育てることを知っていました。
テスは唾をのみます。
口の中はからからに乾いていましたが、もう一度、何かをのみ込むように喉仏を上下させました。
アルカディエーラが弾かれたように振り向きました。
次の瞬間、銃声とともに、彼女は本当に弾かれました。
血が散り、体を一回転させて、どさりと重い音を立て倒れます。
前のめりに倒れたアルカディエーラの後ろでは、テスが銃を両手で握っていました。
アルカディエーラは何もない前方へと弱々しく手を伸ばし、呻きながら
テスは彼女の
銃をホルスターに収めます。
暗緑色の髪。
茶色い目。
テスにあまりによく似た顔立ちの女アルカディエーラは、頬を地面にこすりつけ、僅かに顔の角度を上げました。
その顔に血の気はなく、目はあっちを向いたりこっちを向いたりしており、定まりません。
唇は血で真っ赤です。
彼女は何かを言おうとして、弱々しく血の混じった咳をしました。
指先が、力なくテスの膝を撫でました。
彼女は殺されたかったのだとテスは考えました。
ところでどうして彼女が自分の母親だとわかったのか、自分にそう確信させたものが何だったのか、テスにはわかりません。
アルカディエーラが語った内容に関連しているはずですが、彼女が何を言ったかさえ、もはや思い出せません。
出自に関する記憶が完全に失われたのだとテスは理解しました。
思い出す可能性は、もう決してありません。
それに
アルカディエーラはもう語りません。