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文字数 1,462文字
結構な距離と高低差があったのですが、テスの一撃はジュンハの首を正確に撃ちぬいていました。
テスはそのことに、つい安堵してしまったのです。
弾が当たった場所が首だったことに。
ジュンハの顔がきれいに残ったことに。
仰向けに寝かせ、目を閉じさせ、服の襟を立てて
波が石を洗います。
石が音を立てています。
カラカラと。
カラカラと……。
そういえば、追っ手がもう一人いたことを思い出しました。
テスは顔を上げず、血で汚れたジュンハの服の胸のあたりを見つめます。
ジュンハはテス一人のためにかなりの額をつぎ込んだようです。
赤毛は、近くに転がる平たい石に腰を下ろしました。
この男の言うことももっともです。
テスにだって行くあてがあるわけではありません。
それに、何となくですが、話していると何故だか安心できるのです。
この男は嘘をついていないとわかるのです。
立ち上がるミスリルにつられるように、テスも腰を上げました。
―つづく―