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文字数 2,394文字
かつて、地球人も地球を破壊した。汚染。破壊。改造。汚染。破壊。改造。汚染。破壊。改造。
でもそれは必然だった。正常な進化と進歩の歴史の中で起きるべくして起きたこと。言語生命体たちがアースフィアに対してしたような、根源の否定に基くものではなかった。
『自分が存在していたくない』という類の願いによるものではなかったんだ。
行く先で、テラスの扉がぎいぃっ、と、ひとりでに開きました。
夕日の中へと二人は出ていきます。
黒い長い影が、二人の体から流れ出てきます。
霧は晴れていました。
風が吹いています。
テスは腕を抱きます。
凍えるほど寒いのです。
テスだけが。
どこにいようとも。
石造りのテラスを風が渡っていきます。
キシャの金色の瞳がまっすぐテスの目を見返しました。
足許から男の声がした。
テスはすばやく目を走らせますが、自分とキシャの他には誰もいません。
いました。
砕け、めくれあがった石床です。
石床は言葉を続けました。
キシャが石を蹴りました。
それきり石は喋らなくなりました。
頭上の空は黄色。湿原の果てに向かって赤くなります。
キシャの白くほっそりした指が、空をなぞります。
その軌跡を辿って、テスは目を動かしました。
テスは丸い闇から目が離せませんでした。
世界の
崩壊の象徴。
その黒い太陽は、虚無とは違いました。
どこか邪悪な気配がありました。
しかもその気配は、テスを見つめ返しているのです。
※
テスは神殿を後にしました。通りを行き、広場を過ぎ、村を囲む柵を越え――
※
二人は舗道を歩きます。
荒れた舗道です。
沼に出ます。
テスははじめて気付きます。
石となり、泥にまみれて岸に転がる鳥たちに。
その無音の嘆きに。
誰が、または
テスは鳥たちを見ます。
封じられた透明な霊を。
悲しき霊を己の瞳のなかへ招き、飛ばします。
視界に入る全ての鳥の魂を瞳に吸いこんで、空っぽの心に入れ、軽くしかし絶対の守護と拘束の扉を閉ざします。
テスは心を閉ざします。
暗き鍵。