10-4
文字数 1,638文字
母屋に向かうテスの肩に、後ろから走ってきたアエリエが手を置きました。
テスはアエリエの目をじっと見つめながら、母屋からの声に耳を澄ませました。
農場主の声は聞こえません。ミスリルが一人で対応しています。
母屋の壁の陰に隠れて、テスはアエリエに囁きます。
振り切るように背を向けて、テスは母屋を壁沿いに回り込んで玄関口へと向かいました。
すぐにミスリルと三人の言葉つかいたちがテスに気付きます。
ミスリルと、そして心配して追ってきたアエリエとを警戒し、男たちはすぐには動こうとしませんでした。
ミスリルの放つ威圧感が静かに場を支配し、
全員の目がミスリルに集まります。
深く鋭いその声に、全員が押し黙ります。
そのとき。
視界が暗くなりました。
大きな影に覆われたようで。
テスは恐れながら、天に目を向けます。
夕闇は深く。
空は赤黒いほどです。
一人が、去り際 に言い残していきました。
―つづく―