009 いつぐらいに戻って来るか、 

文字数 284文字


「いつぐらいに戻って来るか、言っていた?」
「それが……、どうなるか、わからないって……」
「ダメな男だね」
「……すみません」
「キミのことじゃないからね。アイツだよ」
「……」

 何も返答できないぼくを救ってくれたのは、2階の時限爆弾だった。

 貴衣さんが、さっと立ち上がった。
「キツかったよね。ありがとう」
 そう言って、階段を上がっていった。

 ぼくは、貴衣さんに巡業中にあったいろんな話をするつもりだったのだけれど、何も話すことは出来なかった。
 また、落ち着いてから出直そうと思って、外に出て静かに玄関の引き戸を閉めた。

 しかし、この日が貴衣さんに会った最後の日になった。

 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み