◆ 忘備録(三十二) 八月九日(土) 2 

文字数 1,024文字


 岡本さんとユーコが戻って来た。
 
『イオ』に顔を出すと歓待されたと、上機嫌だった。
 明日の夜に、『イオ』で公演することを決めてきたという。

 なんだか、除け者にされたと感じる。 

「中島に電話をした」と言った。
 カメラマン志望の中島くん(二十六歳)は、東京で測量のバイトをしていた。
 写真を撮影するために、明日合流するとのことだ。

 岡本さんがぼくに気を遣って、呼んだのかもしれないなと思った。

 この日の岡本さんは饒舌だった。

 広島大学で中核派だったとのことだ。
 河村・人当たりが良いので委員長。茫洋としていて、集会によく不参加で他の学部の執行部から突き上げられていたが平然としていた。
 あとで聞くと「眠っていた」との答え、とにかくよく眠る男だったとのこと。

 岡本さんは副委員長。
 田之上・執行部の一員として活動していた。女によくもてていたが、神経はピリピリしていたとのこと。
 河村が田之上と同棲している女が、SEXしているところを覗く目的で彼のアパートへ泊まりこんだ。
 真ん中にカーテンがあって、そこから覗いていた河村に田之上は水をぶっかけて「出て行け!」と叫んだ。
 そんなことがあったにもかかわらず、二人は今も仲が良いということだ。

 三人で場末のストリップ小屋でバイトしたときの話。
 支配人、一八五センチ、太い腕。「ジャイアント馬場と腕相撲をして勝った!」ことをいつも自慢してきた。
「すごい、すごい!」と褒めるとニコニコして可愛らしかった。

ヒモの話。
しょぼくれたおじいさんだが、ストリッパーの奥さんは若くて美人だった。

 流れ者のヤクザがよくやって来た。
 千葉のヤクザがよく女をストリッパーとして連れてきた。
 河本が抱かせてくれとヤクザに頼み込んでOKが出た。
 女の寝ている部屋に行ったが追い返された。
 しかし、どういう訳か「女と七発もやった河本はすごい」と伝わった。

 
 暴走族風のカッコイイ男がオートバイで乗り付けて来た。徳島で社長と知り合いここで仕事をすることになった。しばらく働いていたが、千葉のヤクザと二人で売上金を持ち逃げした。

 河本が金を貯めて女を買いに岡山に行ったが、何故かションボリして帰ってきた。
 訳を訊くと岡山の駅前でウロウロしていたら女が近付いて来ていいムードになった。
 ホテルへ行く前にお酒を飲もうということになり、バーに連れ込まれたら、そこが暴力バーで有り金巻き上げられて追い返された。

 
 
 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み