◆ 忘備録(四十六) 八月十三日(水) 1  

文字数 712文字


 麻績(おみ)小学校を出発して、聖(ひじり)高原に入る。
 ここは、千曲川と犀川の間に広がる高原で、聖山の麓に位置しているとのこと。
 標高1000mに位置する高原の周辺には、カラマツや白樺林の中にキャンプ場もあり、近くに湖も広がっている。

「今日は、ここで泊まる」
 岡本さんが宣言した。

 いい判断だと思う。

 人の目を気にしないと思ってはいるのだけれど、どうしても気持ちのどこかが緊張してしまっている。

 森林の中でのんびりとして、英気を養うのだ。

 昼食はぼくが作るとかって出た。

 昨日、スーパーでうなぎの蒲焼の缶詰を四個、買っておいたのだ。
 ぼくのポケットマネーだけど、岡本さんに勝手なことをするなと言われかねない。

 それでも、今夜出そうと思っていたが、昼に食べることにする。

 岡本さんが意地を張って、うなぎの蒲焼を食べないかもしれないので、蒲焼の身を切り分けて、炊き立ての飯盒に入れてご飯にまぶした。
 匂いでお腹がぐっと鳴る。

 飯盒がひとつしかないので、岡本さんとユーコに先に食べてもらう。
 岡本さんは、うまいといって食べている。

 飯盒で米を炊く間に、うなぎの蒲焼を火の近くに置いて暖める。
 缶詰を少し開けておかないと、爆発してしまう。
 高校の山岳部の時に、カレーの缶詰を火にかけたままにしておいて、爆発したことがあった。
 周りに黄色の物体が飛び散ったのを見て、「うんこ」だと騒いだゃつがいた。
 最終的にはそうなるのだけれど、香りはカレーだった。

 おかずとして出すと、それもうまいといって食べてくれた。

 ぼくも炊きあがったご飯を、中島くんと分け合って食べた。
 うなぎの蒲焼はおいしい。
 こんなことで気分が変わる。
 単純なのだ。

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