◆ 忘備録(十)  八月四日(月) 2 

文字数 696文字


 国道一号線と県道の平坦な道なので、足取りも軽く十一時半に岡谷の新屋敷(あらやしき)公民館に着く。
 これから食事をして宣伝に出る。

 ぼくが山岳部で覚えた、マグロ缶を使った得意のマグロ混ぜご飯を作る。
 
 公民館の管理人のおじいさんに会場費、1000円を払う。
 午後五時から十時まで借りているとのこと。
 ぼくたちのことを面白がっている様子だ。
 交渉しだいで、宿泊させてもらうことができるかもしれない。
 と思う物の、昨夜のこともあるので野外のほうが気は楽だ。

 サントリーのビンに入れてある石油をあげると言うのだが、灯油を使っているので好意だけ受け取る。

 隣の公園で午後二時まで食事をしたり、チラシを書いたりして時間を過ごし町へ宣伝に出る。下諏訪よりは人通りは多いが、遠巻きでこっちを見ている。

 チラシを渡そうと近づくと逃げていく人が多くて、気が滅入ってしまう。

 駅前で「色々な芸人を東京から呼ぶけれど、今度人形劇をやってもらいたいと思っているのだが、料金はいくらぐらいだ」と声をかけられた。音楽友の会の北川と名乗った。
「一度観てもらってからの方が良いんですが」と誘っても、来る様子はなく、しきりに料金のことこ訊いてくる。
 子どものための人形劇という感じで見ている。

 一度戻って人形を変えて宣伝に出かけようということになったのだが、雨が降り始めたので、仕込みをすることにした。

  ラジオで東京は明治以来の寒い夏だということだ。
  昨日は20度を割ったとのこと。
 
 長野は今夜から集中豪雨らしい。
 そうなると、公園のベンチで寝るよりも、屋根のある公民館がいいのだが……。

 
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