◆ 忘備録(三十九) 八月十一日(月) 2  

文字数 401文字


 篠ノ井線(しののいせん)に沿って北上する。




 篠ノ井線は、長野県長野市の篠ノ井駅から長野県塩尻市の塩尻駅までを結ぶ、鉄道路線(幹線)である。

 中島くんが来てくれたお陰で、ぼくがお喋りすることが出来るようになった。
 思えば喋ることに飢えていた。

 必要なことは喋るけど、たわいもない会話は全くなかったのだ。
 
 ぼくがリヤカーを曳くと横に中島くんが来てくれる。

 ユーコは中島くんとは、普通にお喋りをしている。
 そんなときは、ぼくと岡本さんがペアになる。

 ぽつり、ぽつりと岡本さんと話すのが嬉しい。
 岡本さんの首の後ろ側に、毛が一本伸びていることに気づいた。
「ちょっと、動かないでください」
 ぼくがその毛を抜こうとした。
「抜いちゃ駄目だ」
 この巡業の「げんかつぎ」のために伸ばしていたのかと思った。
 岡本さんは、首の後ろに指を這わせて、残っているのを確かめた。
 ユーコが抜くのを楽しみにしているのだそうだ。
 




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