第27話 見知らぬ猫たちに見つめられながら②
文字数 2,237文字
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――人との暮らしは窮屈だ。
――永遠に狭い場所へ押しこめられる。
過去にそう聞いたことがある。
真偽のほどはわからない。なぜならねこねこファイアー組は
だからこうして人との暮らしを体験している者にたずねるしかないのだが……
そう言われると、心の負担が軽くなった。
なにせ外の世界しか知らない者にとっては、内の世界の事情はややこしく感じられる。
人間絡みのことや猫の扱いなど、ここで意を決するには何かと不明確なことが多すぎるのだ。
外野の視線が突き刺さる中、おれは子どもたちにも意見を聞いてみた。
家主のオーハラに続き、猫オタも庭先へやって来て、おれたちに手招きしてくる。
室内猫からの容赦ない視線を浴びながら、縁側を下り、建物の入り口へと移動していく。
それを見た猫オタは、
まるで一生の願いでもかなったのかというくらいのオーバーリアクションで吼えた。
そうツッコミはしたが、この男に対しての警戒心はだいぶ薄れている。
おれたち家族に危害を加える素振りはないし、初見から世話になっているからだ。
とはいえ自分から近寄る気にはなれないので、じろりと冷めた目を向けつつ、ある程度の距離は保ったまま猫オタの横を通過した。
中年女性のほうは、引き続きパンフーの飼い主と会話している。
中年女性はフェンスの向こう側にいる柴犬へ手を振った。
見事なコミュニケーションというべきか、まるで人間と心が通じ合っているかのようなやり取りだ。
パンフーは挨拶を済ませると、シッポを振りながら飼い主と共に歩き去っていった。
かすかにつぶやきながら入り口へ行くと、オーハラがさりげなくドアの隙間を広げた。
おれは子どもたちが後ろにいることを確認し、前足で敷居をまたぐ。
それだけでなく、言動や態度の端々から歓迎されていると感じることができる。
ところが――
強烈なニオイに鼻を刺激され、つい足が止まってしまった。
そばにいる子どもたちもうろたえて、上げた前足を宙に浮かせたままでいる。
ニオイのもとをたどって視線を動かしていくと――
やがて玄関に敷かれた布の敷物にたどりついた。
息を殺しながらおれは前足をそろそろと動かして、水気を帯びた敷物へ鼻を近づけた。
若いオス猫のニオイがする……。
すると、廊下の奥から、
「チッ」と不快げな舌打ちが聞こえてきた。
ハッとしてそちらに顔を向けると――
無機質に輝く視線とぶつかった。
玄関付近に設置された柵から、ひとりの猫がこちらを睨みつけている。
なんということだ……!
相手の猫は露骨なまでに敵意をさらし、威嚇とも取れる言動を放ってきた。
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