第76話 告白 前編
文字数 2,339文字
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自由のないケージ生活。
朝でも昼でも夜でも、おれのまわりは壁だらけだ。
何もやることがないので寝て時間を潰すが……
そんな軟禁状態が幾日か続き、気怠さをおぼえていたある日のことだった。
ガチャリ。
ドアがひらくと、見慣れた顔が隙間から出てきた。
オーハラは部屋に入ってケージのそばにしゃがみ込むと、金具に手をかけ施錠を外す。
扉をグイと押しやり、外へ一歩踏み出す。
ついでに前後に手足を広げてグゥ~ッと伸びをする。
オーハラが手に持っているのは、トンボに似たオモチャだった。
振るとカシャカシャと音が鳴る。
棒の先端についている羽根飾りの無造作な動き、さらにそこから発するカシャカシャ
オーハラは、それをおれの頭上で何度も振って誘いをかけてきた。
相手の動きはすでに見切っている。
空気さえも切り裂くような一撃が羽根飾りを捕らえる。
間髪置かずに噛みつき、喰らいついたまま引っ張ると――
ブチッ!
あっという間に、オモチャは壊れた。
羽根飾りは棒から引きちぎられておれの口に収まると、グシャリと噛み潰されて形を失う。
オーハラはおれが口にくわえたオモチャを回収すると、溜息まじりに部屋を出ていった。
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それからほどなくすると、イザベラと子どもたちが入ってきた。
冷静に言ってはいるが、冤罪という事情が絡んでいるだけに、内心腹立たしくもある。
そこへ、みつきも交ざってきた。
いつも同じ部屋で過ごしている家族と違って、みつきと顔を合わせるのは数日ぶりだ。
みつきの顔は活き活きとして、声も涼やかだ。
にわかにみつきの表情が曇る。
日射しを遮るどんよりした雲のように、顔にほの暗い影が漂いはじめる。
元はといえば、おれがケージに閉じ込められたのもツートンのせいだ。
正確に言うならツートンの中の別キャラの仕業の可能性が高いが、とにかくいまはヤツの名を聞くだけで、不快感がこみ上げてくる。
視界に入るのも目障りな存在だが――
そんなおれの気持ちなどお構いナシにヤツは現れた。
ツートンが現れギョッとするみつき。
ツートンは何食わぬ顔で部屋の入り口に立つと、親しげにみつきに話しかける。
ツッコミを入れつつも、おれは冷静に相手を観察する。
おもてに漂う雰囲気からいって、どうやらこのツートンは以前に遭遇した『ワル』ではなさそうだ。
ツートンの顔に、あざとさを感じさせる笑みが浮かぶ。
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みつきは大絶叫し、アゴが外れて落ちるくらいに驚愕した。
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