第102話 心温まるメッセージ
文字数 3,809文字
さりげなく玄関との距離を縮めながら、おれは人々の話に耳を傾ける。
オーハラはダンボール箱に片手を入れ、袋を一つ取り出す。
自分の嗅覚が確かだったことに満足し、フッと軽めに息をつく。
視線の先ではオーハラ、
おれが答えるより先に、近くに来ていたファーマがキレのいい声で返事をした。
メデアとイソルダが小走りでおれのもとに寄ってきた。
人も犬猫もウキウキしながらリビングへ移動し、テレビ画面の前に座りこむ。
オーハラがリモコンを操作するうちに、アミと大地の姿がパッと画面に映し出された。
さっそくはしゃいだ声をあげるオーハラたち。
犬猫のおれたちは、騒ぎ立てずにじっくりと画面に見入っている。
アミと大地は、見知らぬ家の中で猫じゃらしを相手に遊びはじめた。
とても熱中した様子で、無理やりつき合わされてる感はまるでない。
ほどなくして、映像の場面が切り替わる。
すると――
唐突にふたりは鳴きだした。
それぞれ棚板の上に佇みながら 大声にならない程度の声を発している。
ファーマは人間のように首ではなくシッポを振って、猫オタの発言を否定する。
おれたちは全員、画面の向こう側にいる少年少女に注目した。
ふたりは穏やかな顔にほのかな笑みを浮かべる。
画面の中の大地とピタリと目が合う。
目の前に大地がいるような気がして、懐かしいような寂しいような、複雑な感情がこみ上げてくる。
ふいにアミと大地が消えて、画面は真っ暗になった。
ふたりの姿を記録した映像が終わってしまったようだ。
もしもふたりが悪いほうへ向かっていたら、これほど胸が温かな気持ちにつつまれることなどなかっただろう。
おれも祈るように、まぶたを閉じる。
ふたりの姿は画面から消えてしまったが、おれにはあのコたちが幸せそうにしている場面がごく自然に思い描けた。
それは花のように短い期間ではなく、根を張った大樹のように、遠い未来まで続いていくように感じられた。
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