第30話 孤独な少年
文字数 2,694文字
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微妙な空気が漂う。
理由はわからんが、メス猫たちは少年猫に何か思うところがあるようだ。
少年猫は無言で廊下へ出ていくふたりを見送った。
年齢はメデアとイソルダと同じくらいだろうか。
体格はこの少年猫のほうがずっと小さい。
幼く小柄な猫は顔をこちらに向け、おれの真向かいに立った。
イザベラはやわらかく微笑み、おれに同意を促す。
彼女が話を盛り上げるようなことを言うのは、この少年を気遣う気持ちがあるからだろう。
なぜそうしているのかはわからんが……。
臆した素振りもなく、堂々と答える。
ケージ越しとはいえ、元ボス猫を相手に怖気づいた様子もないのは立派なことだ。
もしかするとそれは、あのツートンという猫の言っていたように、〝先住猫のほうが立場は上〟という自尊心によるものなのかもしれない。
母猫のお叱りを受けて、子猫たちはシュンとしながら挨拶しなおす。
それを目にした少年猫・大地は、やや不満そうな面持ちのままアゴをクイッと上げた。
上から見下ろすように子どもたちを睨みつけて言う。
言いかけて、途端にガクリとうつむく。
たちまち妙な沈黙が出来上がる。
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しかしそれについておれがたずねる前に、彼は顔を上げて話題を転じた。
なぜか洋風の血を受け継ぐ者は、言い回しが妙だったりする。
おれの知る猫も、長年野良生活を送るわりに語調はオカシなままだった。
おれたち猫には違和感でしかないが、人間には鳴き方が変わっている程度にしか思われないのだろう。
大地はあからさまに気分を害したようだ。
近くにあった木の柱に
ふたりとも呆れ口調ではあるが、心底嫌がっている
大地は爪を研ぐ手を止め、屈辱を
大地はプイッと顔を背け、足早に走り出す。
止める間もなく、部屋から出ていってしまった。
首をひねって考え出す相手を見て、サビ柄の猫は優雅に微笑む。
それは思考がプツリと途絶えるような、思いがけない衝撃だった。
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