第123話 おまえは一体何者だ?
文字数 3,293文字
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『マジカル・ニャワンダ』に現れた最後の里親候補者。
その姿は、なんと――!
珍しいものを見て、面白がるメデアとイソルダ。
おれは後ろを向き、事情通のファーマに問いかける。
ファーマはソファーから下りると、廊下のほうへ歩みながら言った。
なんとも歯切れの悪い返事だ。
もしや明言をためらうほど、悪しき人間なのだろうか?
イザベラは言っていた。
猫を慈しむ気持ちが慈愛の目となって表れると。
この男が猫に注ぐまなざしを見れば、事は明らかになるはず。
おれは事実を確かめるため、里親候補者のもとへゆっくりと近づいていく。
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しかし相手がおれに気づくより早く、男のそばにいる人間たちが反応を示した。
子どもと、女。
二人の人間がおれに注目する。
するとようやく男がこちらに気づいて、おれのほうへ視線を注いでくる。
野性味が抜けないのがおれの悪い癖だ。
知らない人間に見つめられると、無意識に敵意を感じ、反抗せずにいられなくなる。
男の目は嬉しそうではあるが、慈愛の目かといわれると、謎だ。
敵意はないが愛もない、そんな普通のまなざしにも思える。
無遠慮なおれの態度を見かねたようで、再度ファーマがツッコミを入れた。
その直後だった。
新たに別の人間が登場した。
突然玄関ドアを開けて、一人の男が入ってきた。
子どもらしき小さな人間が高めの声で言うと、髪のない男は穏やかに笑う。
その佇まいに邪悪な気配はない。
オーハラとトラヒコが4人の訪問者をリビングへ案内する。
その途中――
通路にいたおれは、ふいに男から視線を注がれた。
それにしてもこの男、人間にしては声も挙動も静かだ。気配をあまり感じさせず、どこか
座卓を囲んで座ると、人間同士のやり取りが始まった。
まずオーハラが向かいにいる訪問者たちに問いかける。
おれはその模様を、ひとまずダイニングテーブルの下に潜んで観察する。
廊下からリビングをのぞき込んでいたファーマが、おれに呼びかけてきた。
ソファーの上で丸まっているアカリ婆とヒカリ爺が、眠たげな顔を起こして言う。
おれは階段付近にいる子どもたちに視線を移し、問いかける。
メデアとイソルダは、そっとリビングに足を踏み入れると、里親候補者のもとへ忍び寄った。
男の真後ろに肉薄すると、ふたりは鼻先を近づけてニオイをチェックし始める。
なんとも言えない表情の子どもたち。
その顔から、感情のすべてを読み取ることはできない。
だが……
急におれの気持ちは落ちつきを失った。
腹の底からゾワゾワと虫が這いあがってくるように、奇妙な感覚がこみ上げていた。
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