第40話 みんなの説得
文字数 2,625文字
大地は心に傷を負っている。
おれは里子に出されたことも、里親に引き取られた経験もないから、その痛みを想像することしかできない。
だがこの少年猫の境遇を思うと、心に雨が降るようだ。
もしもある日、なついていた人間の元から離れなくてはならなくなるとしたら……
とても受け入れられないだろう。
けれども、受け入れなくてはならない。
その人たちのことがどんなに好きであっても――
その場所にどれほど思い入れがあっても――
決定に従って、別の場所へ旅立たばなければならないのだ。
大地は心なしかうれしそうだ。
手に込めていた力がゆるみ、顔には
アミの言うように、大地はまだ幼い。構ってもらえたり、気にしてもらえたりすると、それが喜ばしいあまり周囲の関心を引きたくなるのだろう。
だからといって、他の者達を振りまわしていいとはならない――。
大地は再び木の柱に手を当て、
イザベラだけでなく、メデアもイソルダも、ケージの中から
おれも同感だった。
世間の厳しさを知っているだけに、大地の人に対する不満は充分すぎるほど理解できる。
いや、理解できるからこそ、その心の奥底に隠れているものが見えてしまっていた。
おれが一喝すると、大地は猛スピードで走り去っていってしまった。
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