番外 終わった恋の物語
文字数 4,566文字
クンクン。
クンクン。
窓、壁、天井。家じゅう探せる限り調査した。
残る部屋はわずかだが、おそらくその空間を
拙者は、己の不幸を嘆かずにいられない。
独り言をこぼした直後、激しく後悔の念に駆られた。
しまった!
後ろに、誰かいる!
サッと首を動かし振り返ると、
ドアの隙間から、ファーマ殿の顔がぬっと出てくる。
敵方や現場の調査をして情報取得を務めとする
なんたる失態っ……!
しかしながら、かねてより自分自身のこととなると、つい本音を隠しきれず露呈してしまうのが拙者の欠点でもあった。
それからアタシたちは脱走を
オーハラさんらの目を盗んで、逃げようって決意した。
ファーマ殿はそう言って、拙者を励ましてくれた。
いままで秘かに、飼い猫は楽な生き方をしていると思っていたけれど、それは拙者の早合点だったようだ。
――飼い猫にもそれなりの苦労がある。
そう考えを改める機会を得られたのはむろんのこと、彼女との語らいは失恋の痛手をやさしく包みこんでくれたのだった。
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