第33話 トラヒコさん
文字数 1,920文字
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ちょうど話が一段落した頃だった。
部屋の外から人間の声が聞こえてきた。
何かを呼んでいるのだろうか。
声はさきほど玄関口から聞き取った中年男性と同じものだが……
納得した直後、ドアの隙間が外からグッと押し広げられた。
代わりに空いた隙間を埋めたのは、一人の人間だった。
例のトラヒコとかいう人物だろう。
実際に猫たちと会話しているかのようなタイミングの良さでおれたちに気づくと、人間は驚きの声を発した。
よくわからんが、トラヒコという男はおれや子どもたちを見ながらケージのそばに座る。
その口調は、まるで心許せる親友に語りかけるかのようだ。
笑みがこぼれる口元からは、白い牙……ではなく、白い歯が整然と並んでいる。
イザベラが連れ去られた出来事は、いまだにおれたちの心に苦い思い出としてわだかまっている。
その件に関わった相手となると、やはり怒りをおぼえずにいられない。
たちまち周囲は一色触発の険悪ムードにつつまれる。
指先でちょんと
トラヒコは鼻からスーッと息を吸い込み、天井を見上げて声を張った。
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おれはとうとう
その顔面へ、ビシッと猫パンチを喰らわせる。
トラヒコは、面目なさげにしょんぼりとうつむいた。
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