第89話 かわいさに引き寄せられて
文字数 2,672文字
ついに生まれた愛しい子どもたち。
生まれたばかりの子猫たちは、それぞれ押し入れの敷物の上に並べられている。
その小さな体をおれとイザベラは左右から挟むようにして身を横たえている。
おれたちは互いの顔を向き合わせながら話を始めた。
すると押し入れの外にいるファーマが言った。
おれは軽く半身を起こし、畳の上にいるファーマを見下ろしながら問いかける。
再びイザベラと子猫たちのほうへ向き直って、ぬくぬくしていると――
フングルルル
フングルルル
荒い鼻息が聞こえてきた。
突如、近づく気配。
肌がピリつくような異様な熱気。
振り返れば、異常に興奮した猫の顔がそこにあった。
とっさに起き上がって、おれは侵入者と
ツートン――ではなく、その心の中に出現した新たなキャラ――エンドレアと。
そう言ってエンドレアは前のめりになって子猫たちのほうへ顔を寄せ、再び「フングルルル」と鼻息を荒くした。
ファーマの口から、呆れたような引き気味のツッコミが飛ぶ。
みつきもドン引きの顔で押し入れの手前に立ったまま、エンドレアを見上げていた。
おれが口ごもると、エンドレアは胸を反らし、やや傲慢とも思えるような態度をとった。
おれの発言にファーマとみつきも同意する。
幼い子どもがそばにいるので大声で威嚇はしないが、容赦なく相手を睨み据える。
周囲の空気がトゲトゲしさを帯びてくると、
まるで険悪な雰囲気を察知したかのように、オーハラが階下から訴えてきた。
不満を垂れるエンドレアを一喝し、おれはその体をグッと押しのけて追っ払ったのだった。
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