第124話 父猫は認めない
文字数 2,091文字
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日頃、子どもたちを見てきたおれにはわかる。
いや、それだけではない。
術後、さんざん臭いと嫌がられたからこそわかるのだ。
悔しさが胸にドッと押し寄せる。
まるでおれを慕ってくれる子どもたちの感情を、根こそぎ奪われたかのようだ。
さりげなく男に近づき、その背面にまわり込む。
着衣に顔を近づけ、鼻からスゥーッと息を吸い込んだ。
おれは相手の背中から下の部位に目を留める。
男は正座という座り方をしているので、足の裏が無防備にさらされている状態だ。
ついでに足のニオイもチェックしてみる。
なぜだ?
おれの鼻が突然
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するとファーマの発言に対し、アカリ婆とヒカリ爺が会話に交ざって意見する。
おれは男のツヤやかな頭部を睨みつけた。
ふと横から視線を感じ、見つめ返せば……
メデアの顔には、ほのかな笑みが浮かんでいる。
しみじみしたのも束の間、ムカムカと不快感がこみ上げ、現実にハッと引き戻される。
次の瞬間、全身の血がカッと燃えあがった。
強烈な怒りが爆発し、気づけば男の背中に爪を立てていた。
服の繊維を貫くように食いこむ爪。
それなりに厚みのある生地のおかげで、皮膚を刺してはいない。
だがおれの知る限り、人間は激高しやすい生き物だ。
おれは男の背中から手を離し、身をひるがえす。
みんなで床を蹴って駆けてゆく。
自分で言うのもなんだが、猫の逃げ足は速いのだ。
男が振り返ったとき、おれたちの姿はほぼソファーの裏側に隠れていることだろう。
男はおれが爪を立てた背中を撫でさすりながら笑っている。
意外だ……。
大げさに痛がって、こちらの非を責めるつもりはないらしい。
言い訳っぽく聞こえるかもしれないが、これでもだいぶ抑えているつもりだ。
相手が誰であれ、我が子が関われば冷静ではいられなくなるもの。
他の
もし、あの毛無し男の決意に揺らぎがなく、うちの子たちの里親になりたいのなら――
おれとて本当にそれに値する人物であれば、涙を呑んで譲ろうと思う。
だが、微塵もふさわしくない人間だとしたら――……
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