第136話 保護犬の過去
文字数 3,620文字
柴犬パンフーが飼い主と共にマジカル・ニャワンダへやって来た。
訪問の理由は、おれの子猫を引き取りたいからだという。
湧きあがる怒り。血管がプツンと切れてしまいそうだ。
先日メデアとイソルダがおれのもとを去ったばかりだというのに、どいつもこいつもおれに忍耐を強いるようなことばかり言ってくる。
パンフーは困ったような顔をしながらも、階段の踊り場に佇み、おれの行く手を塞ぐ姿勢を崩す様子はない。
おれが驚くより先に、ファーマが両目を見開いて感情を露わにする。
おれには国の名前などわからん。
だが同じ大陸の者ではないというだけで、そのさして大きくもないパンフーの総身の背後に、果てしなく壮大な世界観をまざまざと見せつけられたような気もする。
パンフーはスッと目を細めて、うれしそうな顔をした。
見ているこちらが幸せにつつまれるような、いい笑顔だった。
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