番外 朝までニャマテレビ④

文字数 2,473文字





ニャアニャ~ニャ~ニャッニャッニャア~~~♪



いやいや、呑気に歌ってる場合ちゃうやろ



ケェーーーーーッ!



すっかり怒っちゃったねぇ



他人事のように言うな



そうですよ、

ラグドール先生のせいですよ



フォオオオオオッ!

アタシの力、ナメるなよぉぉぉっ!



おおお、落ち着いてくださいっ!



まあ、待て

ここはケンカをする場ではない。議論する場だ


物騒な武器(ツメ)は引っ込めて、不満があるなら声にして伝えろ



そうそう、赤シマ君の言うとおり!



先生は黙っててくださいね



――わかった。

爪はしまうよ


けど次に不愉快なことを言ったら、その首元に噛みついてやるからねっ!



望むところだ!



いやいや先生、受けて立たなくていいですから!


とにかく紅さん、あいだに入っていただき、ありがとうございました!

おかげで助かりました!


たいしたことではない



さすがお父さん!


カッコイイ、ニャウ!



妻として誇らしいわ



まぁ、これでどうにか乱闘回避やな



議論再開かのぅ



しかし、あまり過激な言い争いはしないでほしいものじゃが



フン! アタシだって言い争いしにここへ来たわけじゃない。

自分の主張を理解してもらうためさ!


いいか、みんなよく聞きなっ!

要はアタシが言いたいのは……


去勢や不妊の手術を受けさせるなら、その後のサポートもしっかりしてってこと!



なるほど。サポートというのは、主に術後の体重増加に関することですよね?



そうだよ。

別にそれほど難しいことじゃないだろ!


なにもアタシは、ペットの世話に命をかけろって言ってるわけじゃないんだ


エサを小分けにして出すとか、こまめに遊ぶとか、全力投球しなくてもできる範囲でやってくれって言ってんの! 

じゃないと痩せないよ!



なるほど。

それについて、人の代表者たちは反論ある?



いえ、三毛猫さんのおっしゃるとおりだと思います


体重増加は糖尿病のリスクを高めます。

飼い主さんがしっかり管理して、肥満にならないよう注意しなくてはなりません



うちでは食事と運動には気を遣っていますが、これからも手を抜かず、きちんと取り組んでいきたいと思います



よろしく頼むよ



術後の問題について、ラグドール先生はどう思われますか?



ん~、せっかく病気予防のために去勢・不妊手術をしたのに、糖尿病になって苦しみながら死んでいくのはキツイよねぇ



そうですねぇ



いっそゴハンをあげなきゃいいんじゃないの?



……


病気になるより早く死にますよ



だよねぇ……テヘヘ



動物にとっても人にとっても、将来の心配は少ないほうがいいです


そのために去勢や不妊の手術があるのだということをご理解いただければ幸いです



つまり、病気を予防できる不妊手術の必要性は、低くはないというわけだね?



はい



むしろ高いのではないか?



ほぉ、どうしてそう思うの?



肌でそう感じただけだから、理由を明確にしろと言われても困るが……


おれは自分の子どもたちに長生きしてほしいと思っている


むろん手術にリスクは伴うが、病気を減らし、より健やかに生きられるのなら、おれは子どもたちに手術を受けさせてもいい、そう考えているのだ



あなたの考えに、わたしも賛成だわ



ただ手術って聞くと怖い感じがするけど、こうして話を聞けたおかげで不安はだいぶなくなったよ


痛くなければ受けられそう、ニャウ



みんな前向きでなによりだね。

しかし、ぼかぁ、手術以外の方法があれば、それに越したことはないと思うんだ


海外の研究の成果によると、注射だけで長期間不妊状態をキープできるらしいじゃないの



さすがラグドール先生、よくご存じで



まあね!



先生のおっしゃるとおりです。

現段階では、去勢も不妊も全身麻酔をかけてメスを入れなければできない状況ですが


医療の進歩によって、いずれメスを入れなくてもできるようになる日が来るでしょう


もし注射や投薬だけで済むようになれば、去勢・不妊をおこなう飼い主さんはきっと増えるに違いありません


手術をしなくなるので、費用負担もきっと減るはずです



状況次第で希望者が増加するということは、それだけ需要があることに直結します


ですから、やはり去勢・不妊手術の必要性は高いといえるでしょう



どうやら結論は出たようだね



そのようですね



じゃ、今日の話をまとめると……


不妊手術を受けさせるなら、その後のサポートもしっかりしよう!



そして、今回のテーマの結論は……



去勢・不妊手術は、するべきであーる!









うむうむ、異議なしじゃ



話が落着して、よきカナよきカナ



さーて、それじゃアタシは向こうの組に帰るとするよ。

バイ☆バーイ



一体何者だったのだ、アイツは……



オレにはさっぱりわからん



アンタまだ顔にモザイク入ってんのか



フッ、これなら誰だかわからないだろ



……どう見てもツートンだけどね



……わかっていても、バラさないであげるのが優しさかしらね



それじゃあ討論も終わったことだし、食事の再開をしようか



えっ!?

先生、まだ食べるんですか!?



そりゃそうだよ。

まだおなかいっぱい食べてないもん



たったいま、糖尿病の話が出たばかりじゃないですか



糖尿病? なにを大げさな。

食べすぎなければ大丈夫だよ


それに堅苦しいことばかり言ってると、飼い主だって大変じゃないか。

ある程度、動物の好きにさせてやるのが、お互いのためでもあるんだ



それっぽいこと言って、ゴハンにがっつくのはやめましょうね



もうカニカマは控えておきましょうよ



わかってるわかってる。

じつを言うと、ぼかぁ食べることにそれほど興味はないんだよ


でも目の前にあると、やっぱり食べたくなっちゃうじゃないか



結局は食欲に流されるんですね



流されてないよ。

好奇心が強いだけだよ!


さ、器に残ってるドライフードをいただくとしよう!




 カリッ! カリッ!



ほら、みんなも遠慮せずに食べて。

ウマイよ



ああ



ほな、いただくわ



いただきます



わーい、ゴハンだ~


食べつくす、ニャ~ウ!



ご飯がおいしいと~

機嫌がよくなる~



良い飼い主さんと出逢えると~

幸せになる~





 みんなで、カリッ♪ カリッ♪





え~、最後は食事番組みたいになりましたが、みなさん長時間ご出演いただき、ありがとうございました~


今回の討論は、これで終了となります


それではまた別の機会にお会いしましょう!

ごきげんよう~!










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登場人物紹介

紅 

ねこねこファイアー組の元ボス猫。

亡き友人であり部下でもあったオス猫に、妻のイザベラとその子どもたちを託され、結婚することになった。

夫婦仲は良好で近々子ども産まれる予定だが、生活は苦しく、落ち着ける居場所を求めている。

ワケあって住処を離れることとなったので、家族と共に町へ向かうが……。


イザベラ 

紅の妻。メデアとイソルダの母猫。

メデアとイソルダは、亡き夫とのあいだにできた子ども。亡き夫はねこねこファイアー組の幹部のひとりだったが、ニャニャ丸組との抗争により深手を負い、他界した。

知性的な猫であり、ドアノブに手を伸ばして開けることもできる。

メデア 

紅夫婦の娘。

生まれたての頃は甘えん坊だった。弟に冷めたツッコミを入れることが多いが、逆にからかわれることも。

紅が父猫になるまではボスとして遠巻きに眺めるだけだったので、なかなか同居になじめなかったが、共に行動することで次第に心をひらいてゆく。

イソルダ 

紅夫婦の息子。

幼いころから体つきが丸く、運動嫌いが拍車をかけ、筋肉量の少ない体形はぷよんとしている。

スコティッシュフォールドのミックスだった父猫の影響を受け、片方だけ折れ耳。

口癖に「ニャウ」を多用する。調子に乗って姉のメデアをからかい、反撃を浴びることもしばしば。

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