番外 小さな恋の物語

文字数 1,591文字





 わしは小型犬のヒカリ。みんなからはヒカリ(じい)と呼ばれておる。



 隣にいるのは同じ小型犬のアカリ。わしの最愛の(ばば)さんじゃ。



 長い年月を共に暮らし、固い絆で結ばれておる。







 わしらのあいだに子はないが、『マジカル・ニャワンダ』には多くの子どもたちがやって来るので不自由に感じたことはない。



 それにこの家には手伝いとして、人もちょくちょくやって来る。



 手伝いのうちの一人、井伏(いぶせ)という青年に、近頃散歩の面倒を見てもらうことが多くなった。



 この者はたいそうな猫好きじゃ。前世もきっと猫の忠実な(しもべ)だったに違いない。



 彼は猫のみならず動物全般が好きで、気の優しい人間のようじゃ。



 そして、どうやらそういう一面を桃寧(もね)は好んでいるらしいのだが……



のう、(ばば)さんよ



なんじゃ、(じじ)さんよ



近頃あの二人、良い感じだとは思わんか?




 婆さんと夜の散歩中、わしは井伏と桃寧の話題に触れる。



 道路を歩きながら視線をチラッと上へ向ければ……



 わしらを挟むようにして、右に桃寧、左に井伏がそれぞれリードを手に歩いている。



もしや、恋というやつじゃろうか?



ホッホッホッ。

断言はできぬが、それに近いものを感じるぞぃ


そこでちと提案があるんじゃが……



なんじゃ?



陰ながら、井伏と桃寧の手助けしてやろうと思うのじゃ



恋のキューピットというやつじゃな



そうじゃ。

桃寧には幼い頃から世話になっておる


この井伏という青年を気に入っておるのは間違いないようじゃ


わしらがちょっと機会をつくってやれば、二人の仲はグッと縮まるに違いない



なるほどのう。

恋に奥手な飼い主のために協力するというわけじゃな


しかし機会をつくるといっても、わしらは犬じゃ。

人間のように器用なことはできんぞぃ


爺さんよ、一体どうするつもりなのじゃ?



この道沿いに公園があるじゃろ。

それを利用するんじゃ



ホッホゥ~!

二人でゆっくり話す時間を作って、仲を深めさせようというわけじゃな?



そうなのじゃ。

婆さんはわしの考えなどお見通しじゃのう



ワシらもそうやって散歩しながら親睦を深めてきたからのう



ホッホッホッ。

そうじゃったのう



それで爺さんや、手段はどうするのじゃ?

寄り道したいとダダをこねるつもりか?



うむうむ。

さすが婆さん、話が早いぞ♪




 わしは婆さんと示し合わせて、その足が公園の入り口にさしかかると、



 「ワンワン」と人にも聞こえる声でハッキリと鳴いた。



あれ、珍しい。

アカリとヒカリが吠えてる


普段そんなに大声出さないのに



吠えながら公園のほうに行こうとしているような……?


ここで遊んで行きたいんですかね



ホレホレ~、遠慮はいらんぞ~



公園へ寄ってお()き~



井伏と公園で仲を深めるのじゃ~!




 リードをグイッと引っ張り、二人に意思表示を送る。

 


 わしのリードを手にしていた桃寧が、反動でやや前のめりになった。



やっぱり、ここで遊んでいきたいみたい



では、寄りますか



うん、そうしようか




 井伏と桃寧は、わしらに連れられて園内へ入っていく。



しめしめ♪



あとは二人がゆっくり話でもして、距離を縮めてくれたらいいのじゃが


果たしてうまくゆくかのぅ……






ども~! アイ・キャットで~す!


最近文字数多めなので、少し短いですが話を区切ることにしました


文章量多めでも少なめでも読んでくださる方々には、感謝しかありません☆


一話あたりの文字数が多ければ、この話も番外にせず本編に入れてしまうのですが、チャットノベルなので軽いくらいがちょうどいいのでしょうね!


じつはいま書いている番外だけでなく、他のシリーズもやりたいなと考えているところです


紅の去勢に至ってはあえて重くなりすぎないよう配慮したので、去勢や不妊に対する徹底討論を展開できたらなと……


とはいえウチはコメディーですから、軽~いノリはしっかり維持したいと思っています



それでは皆様、ごきげんよう~♪



















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登場人物紹介

紅 

ねこねこファイアー組の元ボス猫。

亡き友人であり部下でもあったオス猫に、妻のイザベラとその子どもたちを託され、結婚することになった。

夫婦仲は良好で近々子ども産まれる予定だが、生活は苦しく、落ち着ける居場所を求めている。

ワケあって住処を離れることとなったので、家族と共に町へ向かうが……。


イザベラ 

紅の妻。メデアとイソルダの母猫。

メデアとイソルダは、亡き夫とのあいだにできた子ども。亡き夫はねこねこファイアー組の幹部のひとりだったが、ニャニャ丸組との抗争により深手を負い、他界した。

知性的な猫であり、ドアノブに手を伸ばして開けることもできる。

メデア 

紅夫婦の娘。

生まれたての頃は甘えん坊だった。弟に冷めたツッコミを入れることが多いが、逆にからかわれることも。

紅が父猫になるまではボスとして遠巻きに眺めるだけだったので、なかなか同居になじめなかったが、共に行動することで次第に心をひらいてゆく。

イソルダ 

紅夫婦の息子。

幼いころから体つきが丸く、運動嫌いが拍車をかけ、筋肉量の少ない体形はぷよんとしている。

スコティッシュフォールドのミックスだった父猫の影響を受け、片方だけ折れ耳。

口癖に「ニャウ」を多用する。調子に乗って姉のメデアをからかい、反撃を浴びることもしばしば。

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