第15話

文字数 993文字

エクスシスト研究家にようやく会えた。絶対この人だ。と思って。噂噺は吞み仲間から伝え聞いていた。僕はとってもお噺をしてみたい。そう望んでいたんだ。

彼は現れた。不意に。其れを望んでいたんだ。僕はお噺を伝え聞いていて、あぁ、噂の彼は君なんだね。と嬉しくなった。僕は高揚して話し掛けた。

「貴方は、僕の知り合いが謂っていたエクスシスト研究家の人?」
彼は如何にもって感じで。僕を待ち構えてくれたかのようだった。

「教えて欲しいんです。悪魔って何ですか?」
「嫉妬心が有るか無いかだよ」
其れについて僕はこう質問を繰り返した。

「嫉妬心の無い日本人が持っている信仰対象の神様は仏様しか居ないのだけれど、貴方は知って居ながらにして僕に其れを謂っているの?」
彼は言葉に詰まった。そして、僕はこうお噺を続けた。

「僕の大好きなお爺ちゃんはキリスト教徒でもあったんだ。幼き頃、よく、大好きなお爺ちゃんに手を繋いで貰って哲学の道を一緒によく歩いたよ。途中にお寺が在るのだけれどもね、その先にも実は道が在るんだ。なんせ、キリスト教徒だからね」

何故だか、其れを聴いた彼は安心したようだった。価値観が僕とは変わりない人間だ。と受け取って貰えたようだった。

「ありとあらゆる、お祓い。祭事に参加してきた。旧来の宗教から新興宗教において。リサーチして伝え聞くところによると、身体に何らかの症状が現れる。それらは身体の一部が、暑くなったり、寒くなったり。

時に軽くなったり、重くなったりと伝え聞いていたのだけれども、それぞれはそれぞれで総て一つ一つの祭事によって感じられる。私もそれぞれの祭事に参加してそれらを感じ取った。そして症状が現れる対象となった彼等は、一番印象深い感覚を一つだけ伝えてくれているんだ。

本来は、総てを感じている。なのに印象が薄かった感覚は印象の中で消去されて居るんだ」
研究者は教えてくれた。なるほどね。って凄いな。好きなことを純粋に好きだということを疑問に思わず。続けて教授になったんだなって。

「それは・・・、シュレディンガーの猫?」
「シュレディンガーの猫」
僕が「シュレディ」位まで発した時。研究家は早口で答えた。僕はキャハハッとなって。それでいて、せっかちさんなんだなと。

「それは京都の人が優しく人と接している時のそれと似ている」
フフフッ。って顔で研究家を見ると俯いていた。僕らは友達になって、連絡先を交換した。
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