第8話

文字数 872文字

一人で呑んでいると、白人男性が一人。同じカウンターに座った。

「こんばんは。観光ですか?」
「こんばんは。そうですね」

「一人で観光って、純粋に日本が好きというわけではなくて?他の何かを考えて?」
「あぁー。先日、離婚してね。色々忘れたくて」

「あぁー。僕と一緒だね。アハハハッ」
驚いた顔をした白人男性。話しが弾みそうになった。

「いやいやっ。僕は英語が話せないから・・・」

二階から女性二人が降りてきて、ニヤニヤ。僕は後は任せたって笑顔をした。白人男性を僕と女性二人で挟んで座った。白人男性は俯いてしまっていた。

「離婚して元気がないんだって。元気にしてあげてよ?」
降りて来てくれた女性の顔を見ると笑顔が帰って来た。「うんうん」って返した。

出身地とか名前とか交換する会話が進んでいて。楽しそうでいいね。ってまた一人でビールを呑みだした。オーストラリア出身って聞こえて。あぁ。そう言えば、民泊している人もオーストラリア出身って言ってたな・・・。

「貴方の為に降りてきてあげたのっ」
その時だけ声を大きくした女性。積極的じゃないか?って見ると。何故だか、僕の方を見て笑顔をくれている。白人男性は、俯いて暗い顔。

「アハハハッ。ダメだよ。落ち込まないで。君と話がしたいって言っているんだよ?」
悪戯してたの、聞き逃した・・・。僕にもちゃんと聞いててみたいな顔。分かったよって返した。ある言葉毎に反応して、僕は女性の顔を見ることにした。フフフッ。

「好き」「嫌い」「華やか」「持つ」「思う」

それぞれの時のそれぞれの表情で。その女性に振り向いて、その表情をした。これでいいかなって。女性は嬉しそうだった。

「それじゃあ、帰るね?」
女性二人はそう伝えて帰っていった。

「スマホを忘れている・・・」
白人男性は落ち込みながら僕に手渡そうとした。

「まだ間に合うよ?フフフッ」
白人男性は急いで店を出て女性たちを探しに行った。

「お前と一緒にするなっ!」
戻って来た白人男性は大声で伝えてきた。笑顔で。これから東京に行くらしい事を聞いた。楽しい東京を味わえるといいねと祈っている。白人男性にとって。
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