第10話

文字数 1,312文字

ベンチの隅に座るお爺さん。反対側の端にタバコと飲みさしのコーヒー。僕はお爺さんに会釈して中央に座り、買ってきたタバコとコーヒーを飲んでいると、スーツ姿のオジサンが増えた。既に座っていたお爺さんは切り出した。

「持ってるもん。ベンチに置きっぱなしはあかんで?」
「せやな。迷惑かけたらあかんな?」
応えタバコと飲みさしのコーヒーを手にお爺さんの元へ近寄った。

「儲かってる様なカッコして」
「いやいや。儲かってへんよ?ほな、行くわ。言い残すことあるんか?そろそろ死んでまうんちゃうか?アハハハッ」

「アホ、言え。フフフッ」
コーヒーを飲み終えた僕はお爺さんに深々と一礼。帰ることにした。




昨日のが信じられなかった僕は、閉店一時間前に髭のマスターの所へ向かった。何時ものノリで伝えた。

「ビール下さい」
「出禁やぁ~、言うたやろ?」

「マジ?」
「マジや」
髭のマスターんちから、程近いお店へ。

「どうも。どこに座ってもいいですか?」
「あぁー。そっちに座って?注文は?」

「ビールを、お願い致します」

何がダメだったのか・・・。怒鳴り込んできた男の人だよなぁ~。でも、人妻って、同年代とかだよなぁ~?いやいや。若い子も既婚者の可能性は、まぁまぁ、あるけど・・・。僕より十歳位、年上の顔立ちと体系だったよなぁ~。

「はい。ビールになります」
「ありがとうございます・・・」

それでいて、若い子ではない。と決めつけるのもなぁー。そうだな。決めつけは良くない。うんうん。そうだよ。良くない。

「悩んでるんですか?」
「出禁になりました・・・」

「キャハハッ。何処で?」
「・・・髭のマスターんち・・・。知ってますよね?」

「マジでっ!あこで出禁てっ、そうそうないわ」
「マジっすか・・・」

「理由は?」
「・・・分からないんです・・・」

「髭のマスターに内容説明してもろてないん?」
「いやぁ~。話を聞こうと、さっき行って来たんですけどね?」

「変な勇気あるな?お前。キャハハッ」
「いやいや。冗談なんじゃないかと思って・・・」

「キャハハッ。嘘は言わーらへんわ。髭のマスターは」
「ですよねぇー」

「よぉー、考えてみぃーや」
「・・・僕じゃないとは思うんですけどね?・・・人妻をナンパした疑惑が・・・」

「キャハハッ。マジで?」
「いやいやっ。してないんですよ?でも、男の人が怒鳴り込んできた日があって・・・髭のマスターが『お前じゃ、無いからな?』って。ぼそって僕に言って貰ってから後に、だったんで・・・でも、それかなぁ~?とは、なってるんですけどね?」

「確実にそれやろ?キャハハッ」
「いやぁ~?大人しくしてましたけどね・・・」

「納得いかへん感じやな?」
「そう・・・ですね」

「フフフッ。聞いといたるわ」
「お、お願い致します」
意地悪そうなニヤニヤとちょっとそれ、面白い感をマスターから感じながら・・・お願いすることにした・・・。大丈夫かな・・・。出禁になってるんだから、こっちはこっちで雰囲気はちょっと可愛い感じだけど・・・いいか。出禁、初めてなったな、しかし。学生時代もはしゃぎ過ぎを抑える側だったんだけどな・・・。考えてもしょうがないよね・・・。出禁になってるんだし。とりあえず雰囲気だけ味わいにこよう。
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