第49話

文字数 1,210文字

「うちの屋根裏に、ハクビシンが居るんですよ?」
笑顔のマダムに笑顔で応え、旦那さんの顔を見ると俯き加減で。

「フフフッ。ハクビシンですか?悪さをするんでしょうか?良く存じ上げませんけどね?悪さをされては困ります」

「ウフフッ。悪さはしないんですよ?とっても可愛い。御飯が稀に無くなる位っ」
旦那さんは、その話はもういいだろ?ってマダムを眺めていた・・・・。

思い出してしまう。あのマダムと旦那さんは元気かな?娘さんいるって言ってたな・・・連絡先、知らない。願った所で・・・。考えるのを止めた。

新宿時代。あの条例が出た頃。知人達とはバラバラになった。立川とか、湘南エリアの頃。元気そうなのはSNSとかで知っていて。笑顔の写真とかしかないのが・・・不安になるけど・・・。

「在宅?」
「在宅だね?」

「って何回言った?」
「二回位かな?」

「思ったより少ないな」
「???」
知人は関係者以外と会話していないらしい事。新しい出会いとかも久しいようで。僕も似たような者で。そうだよな・・・って一人で納得して。

「それじゃ」
「お、おう。」

「いらっしゃいませ」
「これ下さい。先輩がマスターに『バブーって言わされたんやで?この私がやで?ほんで、実際に、バブー言うてるとこまで見られたんやで?様子見て来て』って言われてきました・・・」
「アハハハッ。そうでしたか。フフフッ」

バブーって実際に言ってるとこ見られたって・・・アハハハッ。そういう事、あったかな?んー。どうだろう?アハハハッ。どことなく匂いだ事のあるような・・・。ないような・・・。アハハハッ。
あぁ。あのお店の方かな?あの人の後輩かぁ~。

「まじまじ見んといて下さい」
恥ずかしそうに俯いてくれて。服装は動きやすそうで。思っている人の後輩ではないかもしれない・・・。

「ありがとうございます」
ニヤニヤしながら。優しさに感謝した。

バックヤードに戻ると、椅子に座っている長身のアルバイトさんがスマホで動画。イヤホンをしている。・・・。似たようなことするんだな・・・。

顔を覗き込むと徐々に反対側を向こうとして、椅子に座ったまま少しづつ。顔に自信がないのかもしれない。

カウンターに一度戻って、すぐにバックヤードに。アルバイトさんは監視モニター側に体を向けながら机にうつ伏せ・・・。隣り合ったPCデスク。うつ伏せになっているアルバイトさんに向き合い座って眺めた。動かない・・・ニヤニヤしながら眺め続けた。

事務作業を済ませて、在庫の整理。

「あのぉ~?」
小声で、比較的、遠い場所から。笑顔で振り向いて片方のイヤホンを、ゆっくり外してくれた・・・。フフフッ。

「冷凍庫の上にあるカバン。触っていい?」
笑顔で駆け寄ってカバンを机の上に持って行ってくれた。僕に背を向けて座る・・・R221 G255 B221・・・見えてるけど・・・。バックヤードで話してはくれないようだ・・・。

バックヤードで見えている分には、いいかな?と思って。
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