第35話

文字数 1,219文字

「言うてなぁ?それやったらな?こっちもワーワー言うたろーおもてな?ワーワー言うたん。そしたらな?『何だかごめんなさい』言うからな?あの標準語で」
「分かる~キャハハッ」
話し声が聞こえるバックヤード。躊躇しながら。

「お、おはようございます」
アルバイトさん遊びに来てくれたのかなぁ?ってなりながらも。僕ではない。と。思いたいので、そのように思うことにした。

「お疲れ様です」
どことなく不機嫌なアルバイトさん。何があったのか?深入りはしない。うんうん。

「お疲れ様ですっ!!」
何だか元気で清々しい。まったく。どういう事だ。アルバイトさんは店員さんに小声で。

「本当は不機嫌じゃないんですよっ?」

意味不明だけど。可愛いなそれ。アルバイトさんは流行りのフィギュアの箱を眺めていたい。僕の知らない処で。仲良くなって。毎年の事。いやいやいやぁ~。何時もの事。箱を眺めていたアルバイトさんに。「そのキャラ好きなの?」って聞こうとしたいんだけど。止めといた。君は戻ってこない。次回はお客さんとしてかな?

「先に帰って待ってますぅ~。ウフフッ」
転勤族になるのに・・・。マスターんちへ向かう。

「田舎に引っ越したんやって?」
マスターはニヤニヤしながら。
「ウフフッ。知ってるでしょ?」

2階に女性客が二人が居る事は、入店時。話し声で理解していた。
「田舎に行って何すんの?」
「アハハハッ。魚釣りとか?漁をするには免許がいるけどね?あぁ。猟師さんも良いよね?鹿捕って。フフフッ」

「魚は何が捕れる?フフフッ」
「キャハハッ。ヤマメかアユか?ん~。イワナ。アハハハッ。とかね?」
「どうやって捕る?ハハッ」

「いや、マスター。アハハハッ。良いんだけどさ?知っているんだろうけどね?そうだよね?捕り方の問題だとは思うんだけどね?キャハハッ。アユであればね?毛鈎では、難しいでしょうけどね?釣れるときは釣れますけどね?友釣りか網を張る方が良いでしょうね?キャハハッ。マスター。ちょっとね?アハハハッ」

女性客2名が階段を下りてきたのが聞こえた。やばいよ。この流れでこれは。

「お会計お願いします」
「少々お待ちください」
マスターの奥さんが返事をした。カウンターに向っている僕は振り向きもしないでマスターの顔をみた。ニヤニヤしながら、意地悪な顔をしている。まったく。肩で笑いを堪えて。我慢していた。

「持ってるよっ!!」
女性客の二人のうち一人が叫んだ。ニヤニヤしながら、絶対に振り向かない事を決めて、再びマスターの顔を見た。まだ意地悪そうに笑っている。絶対に負けない。って。振り向かないで扉の開閉音を聞き終わるまで固まった。

「ロドっ!!」
「・・・。そういうんじゃないじゃん?アハハハッ」

後日、知り合いの演奏家さんから、連絡をくれて。

「先日、鹿。二匹から逃げたんだって?」
「アハハハッ。教えなくていいじゃん。マスター。アハハハッ」
おしゃべりだなぁ~。マスター。いいんだけどさ。ちょっと遊んでって感じだろう。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み