第6話

文字数 789文字

僕は髭のマスターに伝えに行った。
「風邪を引いてしまったよ。熱が凄いんだ。でも、今回の風邪は悪くない風邪だと良いのだけれどもね。(笑)」

「旦那がいて、子持ちの娘は、もう、蹴りつけた?」

「・・・あれはとっても善くない風邪だったよ。たちの悪い、風邪だったよ。うんざりだよ(苦笑)」

帰り際の子。帰るのが早かった。それに気付いて、僕は目線を送りながらこう謂ったんだ。

「僕と吞んでくれるのかと想っていたんだけれどもね。帰えっちゃうの?」

彼女は何も応えず、笑顔だけ返してくれた。

男性と女性二人がお店に現れた。職場つながりの男女で、カップルでは無い。マスターは僕に目線を送ってきた。あぁ、またか。と想い彼。彼女のもとへ向かい、決まってね。伝えるべき言葉を贈った。

男性は夏に向けてダイエットをしている。女性は謂った。
「以前よりとっても痩せたんですよ」

彼氏の写真を見せて貰った。同性なのでオブラートに包もうと想いながら見ると、是は100キロオーバースペックな写真。ずっとその女性は笑顔だったよ。何故ならね。一緒に来た彼に伝えたかった内容。

私を振り向かせようと、痩せようと努力してくれているのは嬉しいけど。彼方の人となりに惚れているんだと。僕は感じた。彼に伝えたかった内容を理解して女性に僕からの笑顔を届けた。僕に任せて。

「今日は先に帰るね」
女性は男性に伝え。愉しげに振り向きながら会釈して笑顔だった。

「夏より早く春が来るのは知っているよね?(笑)」

彼は「ん?」と顔を傾げて直ぐに慌てて

「帰りますっ」
笑顔でお店をあとにした。何だかね。冬なのに、冬には無い居心地の良さを僕は感じていたんだ。

何故だか、いつも帰り際。
「私と吞みましょう?」
笑顔で伝えてくれる女性。

「ごめんね。今日は帰るよ。また声かけて嬉しいよ。ありがとう」
って伝え、お店を出た。実際は一緒に呑む気はないだろうけどね。挨拶みたいなものかな?

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