第18話

文字数 1,657文字

「お伺いさせて頂きます」

陶芸家さんの。恐らくはオフィシャルに連絡を入れた。約束事が苦手な僕としては我ながら自身を追い込んだな?感もあって。お腹が痛い。ちょうど当日は雨の予報。雨ならしょうがない。となって。

目覚めると快晴だった。雨の予報が外れる。すぅんごい晴れてんじゃん・・・。逃げられないことを覚悟した。

電車に揺られながら、嵐山駅に差し掛かった頃。観光客達は下車する。保津川下りとトロッコ列車。セットだもんな。空席が出来たので座する。

亀岡駅で下車。ここからバス。サッカー場はまだ建設途中で。複合施設のお土産屋さんやロッククライミング室内用が完備されていて。既に完成近く、楽しみにしている雰囲気が感じられた。

展示会場に直接向かう貸し切りバスが用意されていた。案内・説明役は主催者グループの方。一名と。京都府職員さんの一名だった。京都府職員さん...これも掛かっているのかな?ってなる。

下車すると、小さいのと母親がどんぐりを見つける遊びをしていた。微笑ましくなった僕はどんぐりを撮った。それを見た案内役のお兄さん

「それ。SNSにあげて、バスの案内役の人。こんなんでした~。とか言わんといて下さいよ?」

「丸いどんぐり・・・・蓄えている。まぁね。ハハハッ」

ピントを合わせるのを、蓄えたどんぐりにして。近くにあった綺麗な小さい花をぼやかした。
説明してくれてたの彼だもんね。京都府職員さんも誘導、頑張っているのに。悪いけど・・・。フフフッ。

作品を一つ一つ。観させてもらってから。陶芸家さんのエリアに向かった。何処からか聞こえてくる声。

「彼氏になってくれる人が来ましたぁ~」
あぁ。あるんだ。こういうの。ずぅーっと年中。寒い実家に育った僕は慣れているけどね。アハハハッ。

陶芸家さんは居なかった。残念になって。居る時に・・・。また来るよ。ってした。

急に雨が激しく降ってきて。

喫煙スペースに向う。後から若い男性が来て。見るからに芸術家って雰囲気でかっこいいな。

近くの椅子に座り、一緒に煙草を呑んだ。でも何かを抱え込んでいるような表情で。僕には分からない何かに。もがいているようにも見て取れた。

僕は冷たく「悩めばいいよ」となって。影響を与えることもなく。其れは間違いではない。君が良いと思う事が良いんだ。って伝わっていればいいんだけど。

悩んでいるのを眺めている方が影響されそう。僕も悩めばいいのか・・・。ちゃんと向き合うって事だもんな。学び終えようとした時。雨が上がった。フフフッとなって。芸術家さんに雨は上がったよ?って笑顔を送ると。嬉しそうに。

「よしっ!雨はあがったぞぉ~っ!!」
座りながら両手で膝をぽんっ!っと叩き。目的の場所へ向かっていった。

な~んだ。元気じゃん。フフフッ。って笑みがこぼれた。

再び陶芸家さんのエリアへ。通路の途中。旧式の竈で調理をしている料理人の方達もいて、雨が上がったのを嬉しそうに歩いていると。何故だか「良かったですね」って笑顔をくれた。同じように笑顔で返した。今度は座ってくれていた。

「初めまして。SNS拝見させていただきありがとうございます。事前に連絡しました小千種と申します。観てもいいですか?」

「ちゃんと観てくださいっ♪」
「ありがとうございます」

釉薬の掛かり具合。焼きの入り方。電気釜と登り窯が混じっているような表情。本当はどうなんだろうな?全部、電気釜だったりするんだろうな?僕は「ん~?」ってなりながら。

「これください」
「おぉっ!これはっ!唯一の登り窯っ!お目が高いっ!」

フフフッ。いやいや。他にもあるでしょう?って表情をすると。
「・・・他にも登り窯はあります。これとかね?こっちも。・・・これも・・・そうですよ?ウフフッ」

「でしょうね?可愛いですからね?フフフッ」
恥ずかしそうな所作をしてくれた陶芸家さんに感謝した。

買ったのは「平皿」焼き魚なんかを乗せてみると丁度よさそうなのを。
「大事に使ってください」
「上手くできましたら御見せします」

陶芸家さんと僕「フフフッ」ってなった。応援しています。
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