第23話

文字数 2,725文字

徒歩で移動中。女将の店の前を通り過ぎた。ちょうどお客様がお帰りになるタイミングで。
「今日は本当にありがとうございましたぁ~」

今日は良かったねっ?ってなりながら。僕は無言で女将に笑顔を送った。笑顔を返してくれた。
「今日は、そういうお客さんやないんやで?」
女将が掛けてくれたので、会釈した。

「女将?あの人は、知り合い?」
「近所の人ですっ。ウフフフッ。気にせんといてくださぃ~」

あぁ。そうだね。気にしないで接客してねっ?となって。お迎えのタクシーが僕の横を通り過ぎた。深々と僕もお辞儀をしながら、僕も通り過ぎた。綺麗な女将。


「〝Wife erro〟・・・気晴らしの意味・・・・」
「私も可愛いでしょっ?ムフフッ」

「無性に。デコピンヲ シタクナリマシタ」
「暴力ですっ!それはっ!」
おでこを隠しながら「それはいややぁ~」ってしてくれる。アルバイトさんに感謝した。

「いやいやっ!しないけどね?お話には乗るけどね?お見送りする感じ?あの女性も既婚者だからね?そでれでいて、お客様だからね?楽しそうにして貰えればこちらとしてはね?いいからね?そんなこと言ってたら何回失恋しているんだよ?僕は。ってなるじゃん?」

「お腹すいたぁ~」
「・・・・今日は賄いを無しとするっ!!」

「職権乱用ですっ!!横暴ですっ!!」
「・・・・んで。何が良いの?」

「ホッケっ!!」
「えぇっ!?夜に?ホッケ?いやぁ~。若いのに。綺麗なのにね?・・・・。へぇ~。スタイルもいいのに~。夜にホッケを食べるっ!?いやいやっ!僕も食べますよ?食べますけどねぇ~。見かけによらないですねぇ~?夜にホッケだなんてっ!!いやぁ~。驚きました」

アルバイトさんは「もぅ」って顔をしながら。それをニヤニヤしながら眺めていた。

「掛かってないぃ~っ!!」

「キャハハハッ」

「あるよ?ホッケ。メニューにはないけどね?アハハハッ」

僕は好きな散歩道を歩いた。落ち着きを持って。上七軒界隈。石畳を進んで。その先に北野天満宮。巡って。近くに平野神社があって、今日は寄ろうか寄らないか?日によりますけどね?上七軒抜けた処。「やきもち」屋さんがあって。買おうか?買わないか?もうちょっと進めば金閣寺が見える。ほどほどの距離が在るんだけども。

「請求書お持ちしましたっ!」
「えぇ~?!持ってきてくれはったんですかぁ~?」

「ぁ、いえ・・・・。」
「わざっ!わざっ!」
なんやさ顔で詰め寄る女性。

「近所に用事がありますので・・・・」
「ぁ、いえ。・・・・って言うてくれはったのに・・・・」
恥ずかしがる女性・・・。

「ありがとうございますっ!!失礼致しますっ!!」
請求書を持参した男性・・・。晩御飯。聞いたら大変な事になるな・・・・。


「テイクアウト。始めろや?明日うちに持ってこいっ!」
「いやいやっ。夜の店ですよ?」
常連さんの提案に僕は悩んだ。

「お前はなぁ?俺の言う事聞いといたらええねんっ!!解ったなっ?!」
「ういっすっ!!」

あふぉな僕にありがたい事です。疫病の影響下。まじやばっ!って。マスターに相談しようと。


「って。常連さんが言ってくれたんだ・・・」
「まぁ。お前。あふぉ。やからな?俺は自らアプローチしてるけどな?」

「ううっ・・・。僕を馬鹿にしているよっ!!いっつもそうなんだっ!!」
「似たようなもんですぅ~」

「ぇ?」ってした僕とマスターは顔を見合わせた。
「キャハハハッ」
「マスターはっ!いけずですぅ~っ!!」
下を見きながら、悔しい顔をしながら叫んだ。なんだ。マスターも一緒なんだ。って安心した。

再度、顔を見合わせ。
「キャハハハッ」

「うちは、オーナーいるけどな?」
「えぇっ!!」
「髭のマスターんちも。そうやけどな?アハハハッ」
「うそぉー?!」

「キャハハハッ」
結局の処。僕だけ独りなんだ。って自覚して。何故だか、寂しくなった。僕はドワーフで。みんなは、ケンタウロスの脚なんだって。羨ましく。それでいて頑張っているんだね?ってなった。


帰宅途中。あの子達はなんだったんだろう・・・・。カップルなのか?友達同士なのか?来るなりトイレ貸して欲しい。済むなり、前職は何をしてた?給料は安定している?

結婚はしたことあるのって?他にも何が好きなのか?とか。一方的だったので思い出せないんだけど。明らかに未成年な彼。彼女。昼営業になっているから良いんだけど・・・・。気が済んだようで。「これで大丈夫」と言い残して帰っていった・・・・。

んー。やっぱ。店持ちたいんだろうなって。なった。そうそう。あの時、レモネェードを頼んで僕に鍵を預けてくれたんだ。フフフッ。なかなかセンスいいんじゃないかな?って。

その鍵の柄の部分が分かりやすくハートになっていたからねぇ~?何だかありふれた。誰もが見たことあるような形。純粋にいいね。って。それが妙に力強く感じられた。昼だからいいんだろうけど・・・。


「昼には出ませんっ!夜に出ますっ!」
アルバイトさん脚あるでしょっ!って思いながら
「フフフッ。あい。分かりました。」

手伝ってはくれない。まぁね。時世もなぁ。スマホを机に置いて。さて、準備しますかぁ~。

「どうもっ!」
「やぁ。フフフッ」
アルバイトさんが来てくれた。なんだよ。そういう事?優しいね。

「この人。オジサンの癖になぁ~?私の事。好きでしゃあ~ないねんてっ!ウフフッ」
「そ、そうなんや・・・」
これに乗っかるのかよ?ってなりながら、上手にしてください。って笑顔を僕に向けるアルバイトさん。既に自信なさげじゃん?彼。大丈夫かな?

「迷ってしまぅ~。フフッ」
彼の顔を見ながらニヤニヤ試しているのが受け取れた。大丈夫だと思うんだけどな?ってなりながら話を合わせることにした。

「俺の方がなっ!!誰よりも解っている上に。ちゃんと好きやからなっ!!」
彼は声を張り上げて僕の方を睨んだ。アルバイトさんはそれを眺めながらニヤニヤしてる。
オジサンのご利用ありがとうございます。アハハハッ。

「我慢しといてっ♪ウフフッ」
「ご馳走を。頂きました」
アルバイトさんにしょうがないな。って顔で答えた。一緒に来た彼はアタフタ。悪戯好きだな?フフーフ。

「マ、マスターは!本気なんですかっ!?」
「それはぁ~。野暮ってものでしょうね?フフフッ」

俯き加減の彼氏さん。何があったか知らないけど。いや、何もなかったのにかも知れないけど。
「私が本当に好きなん。誰やと思ぅ~?ウフフッ」
彼氏さんは無言で俯いたまま。僕は堪え切れずにフフフッって。アルバイトさんに睨まれる。急かされて答えた。

「まぁね?如何なんでしょうね?それはね?自信ない人。だと。思うけどね?フフフッ」
「本当に好きやってっ!!」

アルバイトさんと僕とで笑った。
「キャハハハッ」
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