第33話

文字数 2,097文字


小さいのが遠くから駆け寄ってきてくれた。

「見てーっ?」
僕の方を純粋な笑顔で見てくれたんだ。思わず笑顔にさせられた。

「良かったね。うんうん」
近くに来ると恥ずかしそうに俯きながら手に持っているのを見せてくれた。僕の言葉を聞くと振り向き母親に笑顔を送っているようだ。

「他の人に取られましたぁ~。残念なお知らせですっ。ウフフッ」
「ハハハッ。そうでしたか。それは残念」
会釈して通り過ぎた。


「いらっしゃいませー」
「聞こえませんっ」
女性はカウンターにあるアクリル板スレスレに両手をついて笑顔。後から同じように僕もした。恥ずかしそうに体をくねらせ、俯き加減。僕も恥ずかしそうに

「いらっしゃいませ」
好きな女優さんの髪形と色。装いもオマージュ。女性は上目遣いでチラッと僕を見た。うんうん。可愛いねって笑顔を送った。そうでしょっって笑顔。マスクとアクリル板越しに見つめ合っていた。

「きもっ」
店員さんの蔑んだ言葉がボソッと聞こえた。

女性が話し出したがモゴモゴ聞こえずアクリル板に耳を近づけた。
「なに?」
より近づいた。罠だ。笑顔で前を向くのを待って、より近い所で笑顔を向けてくれた。

「本当に一緒に遊びたい。フフフッ。」

「未成年はお帰り下さいっ!!」
強めの声を発した。驚いた顔をしてくれた。

「嫌いじゃな~い。ウフフッ」

笑顔を振り向きながら店を出てった。街中で稀に見かける子だなぁ。って。会釈はするけど。名前も年齢も知らないけど。やっぱ、未成年だったのか・・・。

「お客さん。追い返して、何してんのっ!!」
「いやいや、未成年でしょ?帰ったもん」
僕は悪くないと思いながら店員さんに伝えた。
「・・・あほーっ!!」
「聞いてたより、凄~ないなぁ~」
店内を見まわし、店員さんや僕を見るわけでも無く。店内の造りを見て帰っていった。何故、怒らないの?悔しくないの?って問い掛けられているような。店員さんの睨み顔が・・・。

「・・・ごめんね」
「知りませんっ!!」
返す言葉が見つからなかった。何故、標準語・・・。

「ほんまに、カッコよかったら誘たろー思たんやけどな?」
「最大級の誉め言葉やぞっ!!」
付き添いの男性は帰り際に大声で伝えてくれてからですけどね。笑顔を貰いました。

「・・・ありがとうございます」

女性と小さいのが来てくれた。うん。男の子。女性は割と強めのお酒を頼んだ。小さいのはオレンジジュースかな?って。

「ジンジャエール下さい」
「炭酸飲んだ事ないでしょ?」
「いいんやって」
小さいのに偉いね。って。なりながら。大丈夫かなって。

「ど~うぞ~」

小さいのは、えっ?これっ?顔を一瞬したけど。口に含んだ後。全部口から、うぇーって。
「アハハハッ。まだ、早かったかな?その分はいいよっ。アハハハッ。」
すいません。うちの子が無理言いましてって言いたげな顔で。一緒に拭いてくれた。

「持ち込みはちょっと・・・」
若い女性は、〇ヤングの箱入りの超のさらに上のサイズを手に。

「大きすぎて入りませんっ!!」
カウンター越しの僕は咽た。

「・・・。お帰り下さいっ!!」
笑顔を返した。それだけ伝えたかったらしく・・・・。それを思いついたから来てくれたんだ。言いたいだけの人なぁ~。アハハハッ。

「可愛いんやけどな?下ネタ。残された異性の存在を考えろやっ!!」
店員さんは不機嫌だけど。まぁな。って。可愛いので大丈夫。って伝えるのも憚った。

「冷蔵庫なぁ~?何で保存場所変えるん?面倒くさいんやけど?」
「・・・。まぁね。でも、料理するの僕じゃん?」

矛先が・・・変なスイッチ入ったな・・・・。

「はあ?整頓してるの私っ!!」
「伝えていなかった・・・。重要なお知らせがあります」

「なにー?」
「アルバイトさんは・・・。もう一人居ますっ!!」
「はあ?」

「・・・そういう事」

「平日はなぁー?少ないなぁーっ?って。なってたけどな?」
「稀に来てくれていまして・・・」

「誰っ⁉どんな子っ!!」
「・・・それは、個人情報なので・・・ちょっと・・・」

「あほーっ!!仲間でしょ?」
「・・・。若い子なので・・・イジメるんじゃないかと・・・」

「・・・あふぉなん?そんなんな?乗り越えなあかんのっ!!」

・・・今日は逃げようと。ササッと。

「薄っぺらい話ばっかりやぞ?お前のは」
「何だっけ?ミディアムボディーとぉ~フルボディー。キャハハッ。何だっけ?忘れたよ?教えてよ?」
マスターと僕は顔を見合わせ

「キャハハッ」
元気そうなマスター嬉しいよ。うんうん。うんざり感が薄れていく。

「髭のマスターんち。行けや?出禁。大丈夫になったんやろ?」

「初めまして。ロドリゴです。私はスペイン人です。って言ったら『ロドリゴやったらええわぁ~』って言ってもらったけどね?」
「どこがやねんっ!!って言いたーなるけどな?割とな。やからなぁ~?ムカつくわ」

マスターと僕。
「キャハハッ」

「ひどぃ~っ!!」

マスターと僕。
「キャハハッ」

「いいんやったら。いいけどな?」
「怖い~。髭のマスターんち。直ぐ怒る~」

「キャハハッ。お前。また出禁になるぞ?」
「キャハハッ。」
稀には、髭のマスターんち行こうかなって気持ちにはなっていて。休みの日に行こうかな・・・。
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