第七十四話 最強の男
文字数 949文字
「いやはや、まさかこんなにお集まりだとは。びっくりしたよ」
そう言って優男は穴の縁に立つ。
風に揺れる黄金色の頭髪。
整った顔立ちで、年齢は二十代前半だろうか。
無骨さとは縁遠い、シャープな印象を受ける美男子である。
特徴的なのは、病的に白い肌と不自然に鮮やかな紫色の瞳だ。
それらは見る者に漠然とした不安を抱かせる。
端麗な容姿の中でも際立っていた。
服装は動きやすさを重視した革の軽鎧を装備している。
手には奇妙な形状の剣を握っており、刃が妙に分厚く、先端が丸い。
柄と刀身の間には、大きな宝玉のようなものが埋め込まれている。
ルフトは学園で培った知識から、それが魔力の結晶であると見抜く。
高性能な魔道具の材料などに用いられる貴重品だ。
優男の持つ剣は、一見すると切れ味がないように思える。
だが、目を凝らせば随所に術式が刻み込まれていた。
(魔術武器か……見慣れない複雑な術式だ)
ルフトは険しい表情で考察する。
魔術武器は、仕込まれた術式によって多様な効果を示す。
一般的なものならルフトでも判別可能だが、今回に関してはどのような効果なのか不明であった。
ただの剣だと見くびってはいけない。
おまけに優男からは尋常でない雰囲気と、膨大な量の魔力を感じられた。
意識を向ければ、その異常さがありありと伝わってくる。
(どうして今まで気付けなかったんだ?)
ルフトは決して感知能力に優れるわけではないが、これほどまでに強い魔力の持ち主ならさすがに接近が分かるはずなのだ。
相手は何かしらの隠密能力を有しているのかもしれない、とルフトは睨む。
一方、ドランは驚愕の表情で優男を凝視して叫んだ。
「”烈刃”のアルディ!? あんたは死んだはずじゃ……」
「やぁ、ドランさん。僕はこの通りピンピンしているよ。勝手に殺さないでほしいなぁ」
肩をすくめた優男――アルディは、涼しい笑みを見せる。
その目は確かな悪意と秘めていた。
視線をアルディに固定したまま、ルフトは小声でドランに尋ねる。
「あの人は誰ですか?」
「……アルディ・ライトハイド。”烈刃”の二つ名を持つ白銀等級の冒険者で、この街における最強の男だ」
そう言って優男は穴の縁に立つ。
風に揺れる黄金色の頭髪。
整った顔立ちで、年齢は二十代前半だろうか。
無骨さとは縁遠い、シャープな印象を受ける美男子である。
特徴的なのは、病的に白い肌と不自然に鮮やかな紫色の瞳だ。
それらは見る者に漠然とした不安を抱かせる。
端麗な容姿の中でも際立っていた。
服装は動きやすさを重視した革の軽鎧を装備している。
手には奇妙な形状の剣を握っており、刃が妙に分厚く、先端が丸い。
柄と刀身の間には、大きな宝玉のようなものが埋め込まれている。
ルフトは学園で培った知識から、それが魔力の結晶であると見抜く。
高性能な魔道具の材料などに用いられる貴重品だ。
優男の持つ剣は、一見すると切れ味がないように思える。
だが、目を凝らせば随所に術式が刻み込まれていた。
(魔術武器か……見慣れない複雑な術式だ)
ルフトは険しい表情で考察する。
魔術武器は、仕込まれた術式によって多様な効果を示す。
一般的なものならルフトでも判別可能だが、今回に関してはどのような効果なのか不明であった。
ただの剣だと見くびってはいけない。
おまけに優男からは尋常でない雰囲気と、膨大な量の魔力を感じられた。
意識を向ければ、その異常さがありありと伝わってくる。
(どうして今まで気付けなかったんだ?)
ルフトは決して感知能力に優れるわけではないが、これほどまでに強い魔力の持ち主ならさすがに接近が分かるはずなのだ。
相手は何かしらの隠密能力を有しているのかもしれない、とルフトは睨む。
一方、ドランは驚愕の表情で優男を凝視して叫んだ。
「”烈刃”のアルディ!? あんたは死んだはずじゃ……」
「やぁ、ドランさん。僕はこの通りピンピンしているよ。勝手に殺さないでほしいなぁ」
肩をすくめた優男――アルディは、涼しい笑みを見せる。
その目は確かな悪意と秘めていた。
視線をアルディに固定したまま、ルフトは小声でドランに尋ねる。
「あの人は誰ですか?」
「……アルディ・ライトハイド。”烈刃”の二つ名を持つ白銀等級の冒険者で、この街における最強の男だ」