第十一話 予期せぬ損害
文字数 1,395文字
突如襲いかかってきた獣人族のゾンビにより、探索班の連携は瓦解した。
「うわああっ!?」
「痛いっ、痛いぃ……!」
咄嗟のことに反応できず、噛み付かれる人間。
彼らはパニックになって魔術を暴発させた。
発生した風の刃や氷の針が他の人間を負傷させる。
その隙を突いた獣人族のゾンビがさらに襲いかかった。
まさに悪循環。
厨房前は瞬く間に血の海と化する。
(なんてことだ。このままでは全滅する……!)
ルフトは歯噛みして焦る。
たかが三体のゾンビだが、素早い身のこなしや凶暴性が厄介だった。
通常のゾンビとはわけが違うのだ。
生存者たちは魔術で倒そうとしているが、襲われる仲間がいるせいで上手く攻撃できないでいる。
まだ生きている仲間を巻き込めるほど非情にはなれないらしい。
もっとも、そのような躊躇はゾンビたちにとっては好都合な要素でしかなく、仲間を想った人間から先に新たな犠牲者となっていった。
そうしてゾンビとなって蘇る。
「クソ、ここはもう駄目だ! 稲荷さんに助けてもらわないと!」
ルフトは、ついには見切りを付けて逃走した。
まだ生きている人間も後に続く。
このままだと全滅してしまうのは明白だった。
幸いにもゾンビたちは死体に群がっており、彼らを積極的に追いかけようとしていない。
今のうちに距離を取ればまだ勝機はある。
無論、そんな時間稼ぎもいつまで持つか分からない。
ルフトは脳内で戦略を組み立てる。
(探索班の人はほとんど頼りにならない。獣人族のゾンビがあんな動きを取るなんて想定外だ)
仮に仲間を人質に取られていなくても、あの場で抵抗するのは悪手以外の何物でもなかった。
あれだけの至近距離だと詠唱が完了する前に掴みかかられて噛まれるのがオチだ。
近接武器で戦うにしても、一撃で仕留めなければ殺される。
一介の魔術師たちには荷が重い話だろう。
だからこそ、稲荷の助けが必要なのだ。
彼ならばこの新たな脅威を易々と跳ね除けるだろう、とルフトは思った。
ルフト、食堂の中央付近に目を向ける。
稲荷、数が少なくなったゾンビをじっくりと斬り殺していた。
死体の数が異常に少ないのは、彼が手のひらの口から捕食しているせいか。
狐面で表情は見えないものの、消耗している様子はない。
「あががぁっ!?」
その時、後方にて悲鳴。
獣人族のゾンビが生存者の一人を捕まえたところだった。
ルフトたちが逃げ出したことに気付いたらしい。
もはや猶予は残されていない。
ルフト、急いで声を張り上げる。
「稲荷さんっ! 新しいゾンビがッ! 助けてくださいッ!!」
「ほほう! いいねェ、退屈してたところなんですよー」
稲荷は嬉しそうに反応すると、猛然と駆け付けてくる。
ルフトや他の探索班とすれ違うと、彼は一目散に獣人族のゾンビへと跳びかかった。
「ギャギィッ!」
打ち下ろされた鉈が獣人族のゾンビを切り裂いた。
ただし、切断されたのは腕のみだ。
寸前でゾンビが身をよじって回避したのである。
恐るべき身体能力と反応速度の賜物だった。
「おっ――」
意外そうな声を漏らす稲荷。
そんな彼の首元に、隻腕となったゾンビが食らい付く。
真っ赤な鮮血が迸った。
「うわああっ!?」
「痛いっ、痛いぃ……!」
咄嗟のことに反応できず、噛み付かれる人間。
彼らはパニックになって魔術を暴発させた。
発生した風の刃や氷の針が他の人間を負傷させる。
その隙を突いた獣人族のゾンビがさらに襲いかかった。
まさに悪循環。
厨房前は瞬く間に血の海と化する。
(なんてことだ。このままでは全滅する……!)
ルフトは歯噛みして焦る。
たかが三体のゾンビだが、素早い身のこなしや凶暴性が厄介だった。
通常のゾンビとはわけが違うのだ。
生存者たちは魔術で倒そうとしているが、襲われる仲間がいるせいで上手く攻撃できないでいる。
まだ生きている仲間を巻き込めるほど非情にはなれないらしい。
もっとも、そのような躊躇はゾンビたちにとっては好都合な要素でしかなく、仲間を想った人間から先に新たな犠牲者となっていった。
そうしてゾンビとなって蘇る。
「クソ、ここはもう駄目だ! 稲荷さんに助けてもらわないと!」
ルフトは、ついには見切りを付けて逃走した。
まだ生きている人間も後に続く。
このままだと全滅してしまうのは明白だった。
幸いにもゾンビたちは死体に群がっており、彼らを積極的に追いかけようとしていない。
今のうちに距離を取ればまだ勝機はある。
無論、そんな時間稼ぎもいつまで持つか分からない。
ルフトは脳内で戦略を組み立てる。
(探索班の人はほとんど頼りにならない。獣人族のゾンビがあんな動きを取るなんて想定外だ)
仮に仲間を人質に取られていなくても、あの場で抵抗するのは悪手以外の何物でもなかった。
あれだけの至近距離だと詠唱が完了する前に掴みかかられて噛まれるのがオチだ。
近接武器で戦うにしても、一撃で仕留めなければ殺される。
一介の魔術師たちには荷が重い話だろう。
だからこそ、稲荷の助けが必要なのだ。
彼ならばこの新たな脅威を易々と跳ね除けるだろう、とルフトは思った。
ルフト、食堂の中央付近に目を向ける。
稲荷、数が少なくなったゾンビをじっくりと斬り殺していた。
死体の数が異常に少ないのは、彼が手のひらの口から捕食しているせいか。
狐面で表情は見えないものの、消耗している様子はない。
「あががぁっ!?」
その時、後方にて悲鳴。
獣人族のゾンビが生存者の一人を捕まえたところだった。
ルフトたちが逃げ出したことに気付いたらしい。
もはや猶予は残されていない。
ルフト、急いで声を張り上げる。
「稲荷さんっ! 新しいゾンビがッ! 助けてくださいッ!!」
「ほほう! いいねェ、退屈してたところなんですよー」
稲荷は嬉しそうに反応すると、猛然と駆け付けてくる。
ルフトや他の探索班とすれ違うと、彼は一目散に獣人族のゾンビへと跳びかかった。
「ギャギィッ!」
打ち下ろされた鉈が獣人族のゾンビを切り裂いた。
ただし、切断されたのは腕のみだ。
寸前でゾンビが身をよじって回避したのである。
恐るべき身体能力と反応速度の賜物だった。
「おっ――」
意外そうな声を漏らす稲荷。
そんな彼の首元に、隻腕となったゾンビが食らい付く。
真っ赤な鮮血が迸った。