第二十話 新たな課題
文字数 1,317文字
ルフトとA子は近くの二階建ての家屋に移動した。
思った以上にA子が暴走するので、ひとまず作戦会議と今後の行動方針を確認しておきたかったのである。
このままだとルフトの身が持たない。
いつかゾンビに食われてしまいそうだった。
ルフトはA子と協力して出入り口を家具で封鎖し、窓のない部屋に入る。
家主はいなかった。
逃げ出したのか、はたまたゾンビ化したのか。
ルフトは控えめに話を切り出す。
「あの、戦ってくださるのはありがたいのですが、もうちょっと控えてもらえると助かるなぁと……」
「えー! なんでさ! ゾンビが来ても全部倒せば解決でしょ?」
A子はショックを受けたような表情で口元を押さえた。
まるでルフトが暴言でも吐いたかのようなリアクションだ。
ルフトはなぜか良心を痛めつつ説明する。
「ここは学園の中とは違ってあちこちから際限なくゾンビが出てくるんです」
「最高だね」
「……えっと、つまりですね。あまり派手にやりすぎると、いつか追い込まれてしまう可能性があるわけです。それに、ゾンビ化した魔物もいるみたいなので、余計に危険なんですよ」
現状、ルフトが最も懸念しているのは、後半の内容だった。
先ほど遭遇したゾンビゴブリン。
本来なら町中にいるはずのない魔物だ。
それなのに都市内で見かけたということは、ゾンビパンデミックが魔物の生態系にも大きな影響を与えているということに他ならない。
十中八九、他の魔物もどこかを徘徊しているだろう。
(参ったな。町の外を移動するのも注意が必要だ)
ゾンビパンデミックが起きる以前から、野外の移動は危険な行為であった。
盗賊や魔物に注意しなければならないからだ。
街道から外れた場所を無策でうろつけば、たちまち命の保証はなくなる。
加えて現在は、ゾンビ化した魔物と遭遇する危険も発生した。
人間より遥かに強力な魔物がゾンビになったとなれば、その脅威度は無視できない。
魔物としては最弱の部類であるゴブリンでさえ、ルフトにとっては危険極まりない存在だった。
傷の一つでも負えばゾンビ化する恐れがある。
さすがに単独行動は無謀すぎたか、とルフトは僅かに後悔した。
(こうなってくると、僕自身が強くなる必要があるな……)
ルフトはいつでも召喚魔術が使えるわけではない。
魔力が切れれば、ただの無力な青年となる。
障壁の腕輪という自衛手段はあるものの、守ってばかりではゾンビと渡り合えない。
ゾンビ化した魔物はともかく、通常の人間のゾンビくらいは倒せるようになっておきたかった。
今すぐに解決できる問題ではないが、なるべく早めに策を打たねばならないだろう。
新たな目標を胸に、ルフトは話をまとめにかかる。
「とにかくA子さんは静かにゾンビを倒してもらえればと思います。この町を脱出すれば、もっと楽しい戦いができると思いますので……」
「うーん、そっかー。じゃあちょっとだけ我慢するね」
「ありがとうございます……お気遣い感謝します」
少し残念そうに頷くA子に、ルフトは深々と頭を下げる。
思った以上にA子が暴走するので、ひとまず作戦会議と今後の行動方針を確認しておきたかったのである。
このままだとルフトの身が持たない。
いつかゾンビに食われてしまいそうだった。
ルフトはA子と協力して出入り口を家具で封鎖し、窓のない部屋に入る。
家主はいなかった。
逃げ出したのか、はたまたゾンビ化したのか。
ルフトは控えめに話を切り出す。
「あの、戦ってくださるのはありがたいのですが、もうちょっと控えてもらえると助かるなぁと……」
「えー! なんでさ! ゾンビが来ても全部倒せば解決でしょ?」
A子はショックを受けたような表情で口元を押さえた。
まるでルフトが暴言でも吐いたかのようなリアクションだ。
ルフトはなぜか良心を痛めつつ説明する。
「ここは学園の中とは違ってあちこちから際限なくゾンビが出てくるんです」
「最高だね」
「……えっと、つまりですね。あまり派手にやりすぎると、いつか追い込まれてしまう可能性があるわけです。それに、ゾンビ化した魔物もいるみたいなので、余計に危険なんですよ」
現状、ルフトが最も懸念しているのは、後半の内容だった。
先ほど遭遇したゾンビゴブリン。
本来なら町中にいるはずのない魔物だ。
それなのに都市内で見かけたということは、ゾンビパンデミックが魔物の生態系にも大きな影響を与えているということに他ならない。
十中八九、他の魔物もどこかを徘徊しているだろう。
(参ったな。町の外を移動するのも注意が必要だ)
ゾンビパンデミックが起きる以前から、野外の移動は危険な行為であった。
盗賊や魔物に注意しなければならないからだ。
街道から外れた場所を無策でうろつけば、たちまち命の保証はなくなる。
加えて現在は、ゾンビ化した魔物と遭遇する危険も発生した。
人間より遥かに強力な魔物がゾンビになったとなれば、その脅威度は無視できない。
魔物としては最弱の部類であるゴブリンでさえ、ルフトにとっては危険極まりない存在だった。
傷の一つでも負えばゾンビ化する恐れがある。
さすがに単独行動は無謀すぎたか、とルフトは僅かに後悔した。
(こうなってくると、僕自身が強くなる必要があるな……)
ルフトはいつでも召喚魔術が使えるわけではない。
魔力が切れれば、ただの無力な青年となる。
障壁の腕輪という自衛手段はあるものの、守ってばかりではゾンビと渡り合えない。
ゾンビ化した魔物はともかく、通常の人間のゾンビくらいは倒せるようになっておきたかった。
今すぐに解決できる問題ではないが、なるべく早めに策を打たねばならないだろう。
新たな目標を胸に、ルフトは話をまとめにかかる。
「とにかくA子さんは静かにゾンビを倒してもらえればと思います。この町を脱出すれば、もっと楽しい戦いができると思いますので……」
「うーん、そっかー。じゃあちょっとだけ我慢するね」
「ありがとうございます……お気遣い感謝します」
少し残念そうに頷くA子に、ルフトは深々と頭を下げる。