40話 ほの暗い倉庫

エピソード文字数 1,192文字

え?匂い?
僕が振り向くと、鈴原は突然、気を失ってその場に崩れた。
鈴原!?
僕は驚き、鈴原の所へ駆け寄って抱きかかえた。
鈴原、鈴原っ!!どうしたんだ!?
鈴原の意識はすでになかった。どうなってるんだ!?頭の中はパニックになる。
あっ!
・・・この匂い。何とも言えない甘ったるい匂いが僕を包み込んだ。

急にまぶたが重くなり、意識が遠のいてゆく。

何だ・・・この・・・匂いは・・・

僕は倉庫に唯一ある、小さな小窓の方を見た。窓の隙間からは注射器の針のようなものが飛び出しており、その先からは液体がピュッピュッと噴射されている。

何だ・・・あれは・・・騙・・・され・・・何・・・塩・・・崎・・・どう・・・し・・・て

僕は完全に気を失い、あたりは真っ暗になった。
僕はサイレンのような音でハッと目を覚ました。

どのぐらい寝ていたのだろう?・・・ここは・・・どこだ?

見知らぬ、天井がグルグルと歪んで見える。

状況がよく分からないまま、僕は起きあがった。
痛ててててっ
体中の節々が痛い。頭を振ると、ガンガンと痛みが響く。

まったく、最低だ。一体何が起きたというのだろうか?

外はザーザーと雨が降りしきっているようだった。

そうか・・・思い出したぞ。僕はポケベルに呼び出されて、ここにやってきたんだ。そして、倉庫に閉じ込められて、いつの間にか気を失ってしまったんだ。
うう・・・ん・・・
か細い声が横から聞こえる。見ると、鈴原がぐったりと苦しそうに倒れていた。
鈴原!
僕は鈴原の体を起こし、軽く揺さぶった。
鈴原、おい、鈴原!
弘樹・・・君?
うっすらと目を開ける。
そうだよ。大丈夫か?
気持ち・・・悪い・・・うえっ!
鈴原は口を押さえると、げーっと吐きもどした。

僕は慌てて鈴原の背中をさすってあげた。

胃液のようなものだけを吐き続ける。しばらくして、鈴原もようやく落ち着いたらしく、小さな声で話しかけてきた。
ごめんね
いいよ
弘樹君・・・
何?
私たち、閉じこめられちゃったのかな・・・
分からない
僕は立ち上がってドアの所に行きノブを回してみた。カギはかかったままだ。
なんとかして、開かないかな
僕は思いきって、体当たりを試みた。扉はびくともしない。
やたらと頑丈な扉だな・・・
僕はその場によろよろと崩れた。地面は土で敷き詰められてあり、おかげで服は泥だらけだった。

鈴原は壁に寄り添って、つらそうに体操座りしている。
鈴原、ほんとに大丈夫か?
うん・・・もう大丈夫。それより弘樹君、いま何時か分かる?
そういえば、気を失ってからどのぐらい時間がたってるんだろう
僕は腕時計を見た。午後5:10分。3時のバスが来る前に閉じこめられたのだから、2時間以上気を失っていたことになる。
もう5時10分だよ
そう・・・もう、みんな帰っちゃっただろうね
3時のバスにみんな乗ったなら、誰もいないはずだ。誰もいない・・・

夏休みの間中、こんな湿っぽいところに閉じこめられるのはごめんだ!
つづく
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色