53話 警察の取り調べ2

文字数 1,046文字

僕らが倉庫から出て、寮に帰り、事務室で取ったあの電話のことだ。
では小川弘樹くん、その電話でどんなことを話したか教えてくれないかな?
望月刑事が僕の方を見た。

急に話を振られたので僕は慌てた。
あ・・・いや・・ええっと。

確か僕たちが倉庫に閉じこめられていたことを話しました。

あと、海老原がプーやんとプリクラを撮ったことを聞きました。
それは何時ごろだね?
はあ・・・6時過ぎだったと思いますけど
僕は自信なさそうに答えた。
夕方の6時、で間違いないね?
うーん、どうだったかなぁ
僕は首をかしげた。すべての出来事の時間を正確に覚えている人なんているのだろうか。

なんだか一つでも間違ったことを言うと怒られるのではないかと不安になる。
望月さん、確かに6時過ぎに僕は学校に電話しました。
家で6時のニュースを見ていたので覚えているんです。
海老原が僕をフォローするようにキッパリと言った。
味方がいると少しホッとする。
何かおかしな事でもあるんですか?
鈴原が横から口を挟む。
いや、こちらの調べでは、通話したという確認が取れないんだ
それを聞いて、僕はあることを思いだした。
刑事さん、確か途中で雷が落ちて、回線が途切れたんです。

それで記録に残っていないんじゃないですか?
・・・
僕がそう言っても、望月刑事は何も答えなかった。
じゃあ、つづいて問題の武藤君
はい・・・
若宮君の話によると、君は途中でバスから降りたそうだね
・・・はい
返事だけすると、武藤は顔を下に向けた。
それは何時ごろだね?
4時ごろです・・・
なぜ途中でバスから降りたりしたんだね?
降りてどこへ行ったんだ?
・・・・・・
武藤はうつむいたまま何も答えない。
黙っていては分からないだろう、武藤君?
沈黙が重い空気を作り出し、病室を包み込む。
武藤の様子がいつもと違っていた。

倉庫の小窓から見た武藤のことを言うべきだろうか?
しばらくして、武藤はようやく口を開いた。
・・・言いたくありません
言いたくない?
望月刑事の眉が僅かに動いた。
・・・ここでは・・・みんながいるここでは話したくありません
みんなは武藤の意外な発言に驚いた。

ふたたび沈黙が訪れ、望月刑事は深くため息をついた。
・・・わかった。武藤君、君とは後で別室で話を聞くとしよう。いいね?
・・・すみません
武藤はペコリと頭を下げた。
それじゃあ最後に、事件の当事者である小川弘樹君。

詳しく話してもらおうか。正直に話すんだよ?
僕はそう言われ、少し緊張した。

深呼吸をしたあと、酒井先生に合宿の解散を言い渡されたときからの記憶を辿っていった。
つづく
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登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

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