14話 第2の事件

文字数 1,102文字

何かに弾かれたように、僕は体をビクンとして目を覚ました。なんだか、とても嫌な夢を見ていたようだ。
・・・夢か
外はシトシトと雨が降っている。時計を見ると、7時を少しすぎていた。

昨日の疲れが残っているのか身体がだるい。僕は大きく腕を伸ばし、あくびをした。そうだ、この部屋は僕だけじゃなく、転校生の織田切君もいるんだった。僕は織田切君のベッドの方を見る。
きちんとベッドメイキングされており、彼自身の姿はなかった。どこへ行ったのだろう?

ちょうどその時、朝の放送が流れた。
おはようございます。起床の時間です。朝の掃除をしましょう
キャプテンの海老原の声だ。朝の掃除というのは、この寮の規則なのだが、寝起きにいきなり体を動かすのはかなりつらい。
おーい、起きろよみんな! 朝の掃除さぼらずにちゃんとやれよ! 見回りにいくからな!
海老原の声が寮内に響く。自分たちの寝床は自分たちで掃除するか・・・

僕は仕方なく、よろよろと部屋を出ようとした。すると、突然ガラガラとドアが開き、織田切君が入ってきた。
え!?
僕は織田切君の姿を見て、大声を上げそうになった。彼の着ている白いTシャツは赤く染まっていた。

・・・!?

手に着いた血をぬぐったような感じで汚れている。
お、織田切君、その赤い汚れ、どうしたんだよ!
僕が問いただすと、織田切君はその汚れを隠すように、服を脱ぎ始めた。
・・・・・・
怪我でもしたのか!?
しかし、彼の体を見る限りでは傷口や怪我をしたような所はない。
・・・・僕じゃない僕じゃない
ぶつぶつと僕に背中を向けたまま織田切君がつぶやき始めた。
え? どういう意味?
なにを言っているのか分からない。よく見ると、手にも血が付いているようで、僕の視線に気づき、織田切君は慌てて脱いだTシャツにぬぐい始めた。なにが起きたというんだ?その時、廊下から誰かの悲鳴のような声が聞こえてきた。嫌な予感がした。僕は慌てて廊下に飛び出した。
廊下にしりもちをついている、不格好な武藤がそこにいた。
武藤、どうしたんだ!!
僕は走って武藤の所に駆けつける。
弘樹、あ、あれ・・・
武藤の指さす方向には消火栓と、立てかけられたモップがあった。
!?
モップの白い毛は赤い液体で染まっている。廊下もモップでこすり付けられたらしく、赤く汚れている。

しかし、それよりも驚いたことは、消火栓のドアの隙間から、赤い液体がどろどろと流れていたことだった。
同時に、何かが腐ったような今までに嗅いだことのないニオイが鼻に流れてくる。
うえっ
武藤は鼻を手で押さえる。そのニオイが消火栓のドアの中からすることぐらい、誰にでも分かった。
・・・・
僕はおそるおそる消火栓のドアに手をかけた。
つづく
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登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

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