47話 天井からの赤い雫

文字数 1,605文字

合宿4日目
ポタッ・・・ポタッ・・・僕は、水のようなものが顔に落ちるのに気づき、目を覚ました。水よりも粘度のある液体だった。
何だ・・・
ガバッと体を起こす。部屋は真っ暗で、何も見えない。

静かに降る雨の音だけが外からする。僕は顔に付いた液体をTシャツの袖でぬぐった。口の中で変な味が広がる。
そして、腕時計のボタンを押した。青白い光が暗闇に浮かぶ。

夜中の12時55分。

ほぼ午前1時に近い。寝たのが7時過ぎだったから、6時間ほど寝た計算になる。体は相変わらずだるい。液体は今でも枕の上にポタポタと落ちている。雨漏れだろうか?僕は枕元にあった懐中電灯を取ると、天井に向けてスイッチをつけた。

あっ!
僕は思わず息を呑んだ。天井窓から、落ちてくる液体は、雨水ではなく、赤い液体だった。
血・・・!?
白いTシャツを見ると、赤黒く染まっている。

頭の中は真っ白になり、パニックになる。シャツの袖で顔を拭ったときに僕の鼻血が付着したのだろうか?

顔を再び天井に向ける。
いや違う。このシャツの汚れは天井から垂れ落ちたきた血だ。

心底震えた。そのうち、ポタポタと落ちていた血は、量が増え、ツーッと一本の細い線になった。みるみるうちに、枕は赤く染まっていく。

吸いきれなくなった枕に10円玉ほどの小さな黒い水たまりができ、

「タッタッタッタッ」と嫌な音を立て始めた。

1つの疑念が頭をよぎる。僕はタンスによじ登って、天井窓を開けて中を確かめてみようと思った。足をタンスの取っ手にかけてジャンプする。

懐中電灯の中の電池の接触が悪いのか、ライトが付いたり消えたりするので、僕は何度も懐中電灯を振った。

ようやくタンスに上に登ったときは、ハアハアと息が切れていた。
タンスの上はホコリまみれだった。

頭に血が上って、顔が真っ赤だという事が自分でも分かる。僕は天井窓のネジに手をかけ、開けようとした。血がヌルヌルと手にまとわりつき、なかなか思うように開けられない。

高鳴る鼓動。自分でも、自分の行動が不思議でしょうがなかった。まさか、まさかとは思うが・・僕は夢中で天井窓を開けようとしていた。
ガタン!

突然、重力に負けた窓が落ちた。そして、ブラリと身を任すように1本の手が垂れ下がってきた。
わっ!!
その白い手の指の間からは、血が流れ落ちている。あきらかに死んでいることが分かった。

僕は震える手を必死にこらえて、懐中電灯で舐めるように照らしていった。

その手の主は・・・失踪した塩崎勇次だった。

ダラリと舌を垂らし無表情でこちらを力無く見つめていた。
し・・・塩崎っ!
僕は腰を抜かし、タンスからベッドに落ちてしまった。ベッドのバネでバウンドし、僕は体ごと床に叩きつけられた。
痛ッ!
一瞬、息が出来ず、窒息しそうだった。
塩崎・・・塩崎がどうして・・・
恐怖のあまり、声が震えて出ない。手にしていた懐中電灯の明かりがフッと切れた。あたりは真っ暗になる。
ーーーッ!!
僕は声にならない叫び声を上げた。

懐中電灯のスイッチをカチカチ押してみるが、反応がない。

きっと、電池が切れてしまったに違いない。

これでは右も左も分からない状態だ。

僕はがむしゃらになって、立ち上がろうとしたが、腰が抜けてうまく立てない。仕方がないので手の力で前に進んだ。

ガタ・・・ゴトン。
痛てて
ベッドの角やタンスに頭をぶつける。

・・・そうだ、なにも懐中電灯がなくても、部屋の電気をつければいいだけの事じゃないか。

僕はポケットに懐中電灯を入れると、這うようにしてスイッチのあるところへ向かった。

なんとか力を振り絞って、立ち上がる。手探りで壁に設置してあるボタンを探す。僕は、スイッチの膨らみを感じると、ボタンを押した。
・・・あれ!?
電気がつかない。
おかしいな
もう一度、ON・OFFを繰り返したが、まったく反応しない。

暗闇のままだ。

どうして付かないんだ!?
台風でブレーカーが落ちた?

いや、待てよ・・・。嫌な考えが頭をよぎった。
つづく
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登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

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