36話 捜索 その4

文字数 1,256文字

僕のベッドから、甘ったるいような匂いを感知したのだ。何とも形容しがたい、独特の甘い匂いがする。

ベッドに鼻を押し付けて、息を吸い込む。明らかに僕のベッドのシーツからが匂いが原因だ。
何の匂いだろう?
僕は何度も匂いを嗅いでみたが、匂いの元が何なのか分からなかった。枕元にはいつものように懐中電灯が置いてある。
何か暗いところを探すのに役に立つかもしれないな・・・
僕は懐中電灯をポケットにしまい込んだ。この部屋には塩崎はいないみたいだ。これ以上探しても仕方がない。他を探すか。僕は自分の部屋をあとにした。
僕は若宮の部屋の前に来た。部屋の中からはブツブツと声がして、人の気配がする。もしかして、塩崎か!?
入るよ・・・
僕は静かにドアを開けた。中はカーテンが閉まっていて、薄暗かった。そこに立っていたのは若宮だった。
若宮・・・何やってるんだ?
僕が声をかけても、若宮は何の返事もしない。というよりも、僕に気がついていない様子だ。
若宮、どうしたんだよ!?
・・・霊の道だ・・・霊の道。やってくる・・・
わけの分からないことを口走っている。よく見ると、体が小刻みに震えていた。寒いのだろうか?いや、そんなわけがない。部屋は湿度が高く、むっとしている。若宮の様子が変だ。
・・・来る・・・もうすぐ来るぞ・・・・・・来る・・・もうすぐ来るぞ・・・
来るって・・・何が来るんだよ!?
僕が聞くと、若宮はようやく僕の方を見た。
お前の・・・後ろに来てるじゃないか
後ろ!?
後ろを振り返った。別に何もいない。とにかく、気味が悪い。
何もいないじゃないか。どうしたんだよ、若宮?お前、何かおかしいぞ
僕は心配して言った。しかし、若宮は僕の言うことなど、ちっとも耳に入っていないようだ。そして、ついには声を立てて笑い始めた。
ははは・・・はははは・・・
若宮、お前頭おかしくなったんじゃないか!?
ははは・・・あはははははは・・・あはは・・・
ふざけるのもいい加減にしろよ!
塩崎がいなくなって、みんな心配しているというのに…

僕はムッとして若宮を突き飛ばした。ベッドの上に仰向けに倒れる。それでも天井に向けて笑い続けている。僕はあきれて若宮を放っておくことにした。

若宮はときどき、このように冗談喉を超えたことをすることがある。いくら注意しても、この時ばかりはまったく話を聞かないのだ。
俺は塩崎を探しに行くからな。お前も協力しろよ。もう行くからな
僕は吐き捨てるようにそう言うと、部屋を出た。
部屋を出た。寮を出ると、遠くの方から雷の落ちる音が聞こえた。雨は降っていない。突風が吹き抜けたので、僕は思わず空を見上げた。色のない空は、今にも雨が降りそうな雰囲気だった。
またどこかで雷が落ちた。
台風か・・・
2日前の深夜のラジオの天気予報を思い出した。ひょっとすると、この辺を直撃するのかもしれない。ゴロゴロと不気味な唸りが響いてくる。早く塩崎を見つけないと。

僕は歩き出した。それにしても、塩崎はどこへ行ってしまったんだ。僕は外でウロウロしていると、海老原が走ってきた。
おーい、弘樹
つづく
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登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

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