49話 バイクについて

文字数 1,329文字

事件はいよいよ終局を迎えようとしている。
弘樹が死にそうになるけど、死なないバージョン
・・・助けに行かなくては!!!僕は、鈴原が寝ているA-3号室に向かって駆け出した。

暗くて先が見えず、何度も壁にぶつかりそうになりながらも、それでも何とか先に進んだ。

鈴原の身に何が起きたというのだ!?

頭の中で様々な考えが思い浮かぶ。塩崎が天井裏で死んでいた。死体の記憶は今でも強く焼き付いている。あの臭いや大量の血!どうして今まで気が付かなかったのだろうか?

・・・そうか、天井裏には分厚い断熱材が敷き詰められている。血液はそれに染み込んで、なかなか垂れ落ちてこなかったんだ。

でも臭いは?

確か、天井窓を開けたとたん、鈍い音がしていたが、あれは何の音だろう?・・・・換気扇だ。

天井裏の空気は、換気扇によって、換気口を通り、男子寮の外へ吐き出されるのだ。だから僕の部屋に臭いは立ちこめなかった。

僕はぞっとした。誰がこんな手の込んだことをしたというのだろうか?ますます鈴原の身が心配になってくる。
階段を降り、1階までやってくると、1つだけドアの開いた部屋がぼんやりと見えた。きっと、あの部屋が鈴原のいるA-3号室に違いない。
鈴原、大丈夫か?
僕は部屋に飛び込むと、小さな声で呼びかけた。
弘樹君!?
鈴原が涙声で抱きついてくる。
いったい、何があったんだ?
怖かったぁ・・・だってさ、怪しい人影が見えたんだもん
怪しい人影!?
僕は廊下に顔を出して、見回した。
誰かいる?
いや、誰もいない。・・・それより鈴原、大変なことになったぞ
僕は、塩崎のあの無惨な死体のことを話した。
塩崎君が天井に・・・そんな・・・
鈴原は両手を胸に当ててよろめいた。呼吸が荒くなり、今にも過呼吸を起こしそうだ。

僕は背中をさすった。
この寮、絶対変だよ。俺たちも狙われてるんじゃないか?
私がさっき見た人影が犯人なのかな?
鈴原は声を震わせて言った。
分からない。でも、俺たちは犯人の罠に、もうすでに掛かっているような気がしてならないんだ
私も寝る前にいろいろ考えたんだ。一つだけ、気になることがあって
気になること?
バイクの走行距離のこと
・・・バイクの走行距離?

確か、倉庫から男子寮に向かう途中に、鈴原が熱心に見ていたあのことだろう。
走行距離がどうかしたのか?
私たち、倉庫に3時間閉じこめられていたでしょう?
ああ、確か3時から6時まで
僕は指で数えながら答えた。
倉庫を出たとき、バイクの位置がずれてたから、気になって確認してみたんだけど。閉じこめられる前はメーターがちょうど1000キロだったのが、倉庫を出た6時には1200キロになっていたの
走行距離が200キロ増えたって事か?
そう!3時間で走行距離が200キロ増える・・・
そんなことのどこが不思議なんだよ?
僕は鈴原の言いたいことが分からず、苛立った。
つまり、私たちが閉じこめられてる3時間の間に、誰かがバイクを乗り回したって事になるでしょ?

実際、マフラーは熱々のフライパンみたいに熱くて、雨水を弾いていたの。
200キロ増えてるんだからな
でもよく考えてみてよ。3時間で200キロ走行するって事は、平均時速・・・
鈴原が説明の途中で、急に脅えた声を出した。
弘樹君! 廊下から足音が聞こえる!
つづく
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登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

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