29話 探偵ごっこピンチ

文字数 1,149文字

これって・・・どういう事!?
分からない。どうして武藤のワープロに犯行声明文が残っているんだ?
あ!ちょっと静かにして!!
え?
僕は慌てて口を閉じて、耳を澄ました。廊下から誰かがこちらにやってくる足音がする。
誰だろう・・・
僕はそっとドアの隙間から廊下をのぞいた。
げっ!武藤だ、やばい!
僕がそう言うと、鈴原は慌ててワープロを元の場所にもどした。そして、僕は部屋の電気を消した。
ど、どうしよう弘樹君?今ドアから出たら武藤君に見つかっちゃうし・・・
慌てふためく鈴原。本当にどうしよう?僕はとっさに決断した。
鈴原!ベランダから逃げよう!
え!?ベランダから!?危ないよそんなの
今はそんなこと言ってる場合じゃない!早く!
僕は強引に鈴原の腕を引っ張った。
ベランダに出ると、手すりによじ登り、僕は隣の部屋のベランダの手すりにジャンプした。まさに曲芸である。
さ、鈴原も早く!
こんなの無理だよ!
俺が受け止めてやるから!
なにかっこいいこと言ってるの!
大丈夫だって!
鈴原はしばらく躊躇していると、武藤が部屋に入ってきたらしく、部屋の電気がパッと付いた。決心する鈴原。
いくよ弘樹君・・・!
バッとジャンプする鈴原。足がベランダの手すりに着地したが、ツルリと滑った。
キャァア!
僕は鈴原を体で受け止めたが、勢いに負けて、そのまま地面に倒れ込んだ。
ぐあっ!
僕が鈴原を抱きしめた状態で、2人は落ち着いた。隣からベランダのドアを開ける音がして、
・・・誰かいるのか?
と、武藤の声がした。僕たちはそのままの状態で息を潜めた。
何だ、気のせいか・・・
どうやら部屋に戻ったようだ。
ふう・・・
ちょ、ちょっとぉ!弘樹君、放してよ!
あ、ごめん!
慌てて鈴原を抱きしめていた手をゆるめる。僕と鈴原は武藤に気づかれないよう、部屋を抜けて廊下に出た。
とりあえず、僕の部屋に入った。織田切君はいないようだ。
それにしても、どうして武藤君のワープロに犯行声明文が残ってたんだろう?
ああ、そうだったね
僕はようやく落ち着いて、さっきのことを思い出した。
もしかして、武藤君があんな事したのかな?
え、武藤が?
弘樹君はどう思うの?
僕は少し考え、
武藤とは限らないよ
えっ、どうして?武藤君のワープロにあの犯行声明文が残っていたんだよ?
よく考えてみろよ、武藤のワープロを他の誰かが使ったかもしれないだろ?武藤のワープロだからって、武藤だけしか使えないって事はないんだよ
そっか・・・
鈴原は納得して何度もうなずいてみせた。
でも、どうしよう、このこと?みんなに言った方がいいのかな?
いや、今はマズイだろう。俺たちは勝手に武藤の部屋を調べたんだから。タイミングを見計らって言えばいい。だから、それまでこのことは俺と鈴原の2人だけの秘密だ
分かった
鈴原は僕との約束を交わすと、部屋を出て行った。
つづく
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登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

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