26話 大喧嘩

文字数 1,478文字

僕たちは、犯行声明文をみんなに知らせ、とりあえず、海老原の部屋に集合した。

織田切君を除く全員が集まり、よく見ると誰が呼んだか知らないが、マネージャーの鈴原もいた。

みんなはその犯人からと思われる文章を読み、息を呑んだ。
・・・・・・
おい、誰だよ、こんな事を書いた奴は!?
若宮が手紙をみんなの前に突き出す。
ぼ、僕達の中にこれを書いた奴がいるって言うの!?
塩崎が不安そうに言う。
そうとしか考えられねーじゃねーかよ!風呂場での出来事が書かれてあるんだから、あの時、現場にいた奴しか書けねーだろ!!
悪ふざけにもほどがあるよな・・・
武藤が腕を組んで言う。口調は穏やかだったが、メガネ越しの瞳には怒りが満ち満ちていた。
もし、この中に犯人がいるんだったら、正直に名乗り出ろよ
海老原が立ち上がって言った。
海老原、名乗り出てきたらどうするんだ?そいつを
武藤が顔を上げて聞いた。
殴り飛ばす
ふん・・・こんな文章を書く奴が、名乗り出るわけないだろ・・・
プーやんが小さな声でつぶやいた。
何、プーやん、お前何か言ったか!
海老原がムッとした。
別に・・・
おい、やめろよ2人とも
武藤が間に入る。みんなはため息をついた。合宿に入って何度目のため息だろう。
ねえ、最後の『また殺そう』って・・・何だか気味が悪くない?
鈴原が犯行声明文を見ながら言った。
確かに・・・ペンペン以外にも何かを殺すってことか?
僕はやりきれない気持ちになった。いたずらの度を超えている。
これはまさに、犯人からの犯行予告って奴だな
どうしよう・・・これから・・・ほんとどうしよう
塩崎が動揺し、不安そうな声を出した。
どうするって・・・自分の身は自分で守るんだよ、塩崎!
若宮がこぶしを作って言った。
やっぱり先生に言ったほうがいいよ、これ、やばいもん
バカ!事を大きくしたら、俺達の部活存続の危機だ。それだけはやめたほうがいいだろっ!
部活部活って・・・そんなにバスケ部が大事なのかよ!全然まとまってないじゃないか!現に、お互いの信用なんてガタガタだよ!バスケ部はもう終わりだ!海老原はキャプテン失格さ!
塩崎が、いつになく挑発的だ。
何だと、もう一度言ってみろ、塩崎!
キャプテンとしての実績に傷がつくことばかり気にしてるんじゃないかって言ってるんだよ!
そんなやつに、誰もついていかないって。
塩崎、お前・・・!
海老原は塩崎の胸倉をグッとつかんだ。
やめろよ、何バカなことやってんだ!!仲間割れしてる場合じゃないだろ!!
武藤が海老原の肩をつかみ、無理やり引き剥がそうとした。
うるせー!
海老原が思わず武藤を殴り飛ばした。倒れる武藤。とっさに、僕は武藤を抱きかかえた。
大丈夫か!おい、海老原、自分のやってること分かってるのか!?
もう、いいんだ弘樹。俺は大丈夫だから・・・
そういって、床に落ちたメガネを拾うと、武藤はゆっくりと立ち上がった。

そして、不意をついて、海老原を殴り返した。
キャアッ!
鈴原が思わず悲鳴を上げる。

海老原はプーやんの上に倒れかかった。
どけ、プー!とろいんだよ!お前は!!
フン、何だと!みんないつも僕をバカにしやがって!
実際にとろいじゃねーかよ!
海老原、言い過ぎだろ!
そういうお前だって・・・
もうやめて!
鈴原が突然大声を出して、場は一瞬にして静まり返った。
ドラマのワンシーンのようだ。
どうしてケンカしかできないの!みんなは仲間じゃなかったの!?
鈴原は泣きそうな顔をして、ばっと部屋を飛び出してしまった。
何が仲間だ。こんな時に
若宮が吐き捨てるように言った。
鈴原っ!
僕は呼び止めたが、鈴原は止まることなく行ってしまった。どうしよう・・・
つづく
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登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

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