18話 酒井先生からの呼び出し

文字数 1,713文字

それにしても、本当にハラ減った・・・
プーやんがお腹を手で押さえながら言った。
弁当、あれじゃ足りないぐらいだ。マネージャー、2人分ぐらいくれないかな?
言い終わらないうちに、グーグーとお腹を鳴らす。若宮がそのお腹をポンポンたたいた。
プー、お前はいっつも食い過ぎなんだよ。少しはダイエットを考えろ
僕は自然体なんだよ。それが一番健康・・・
その豚みたいな体型のどこが健康なんだ
ぶ、豚って言うな!!
プーやんと若宮のいつものやりとりを見て、少しホッとした気がした。
さて、と
鈴原が弁当を持ってくるまで、どこかに座って待っていよう。ステージに向かった。みんなも何となく僕のあとに続く。
階段には誰かのバスケットシューズが置かれてあり、僕はそれをどけると座り込んだ。少しほこりっぽい。僕は2、3回せき込むと顔を膝の中に伏せた。若宮と海老原の会話が聞こえてくる。
海老原、バイク、どーする?
どうするって・・・若宮は盗難事件のとき、スペアキーも誰かに取られたんだろ?
バイクで帰れないよな。

俺はスペアキーはポケットに入れてたから。バイクは家に乗って帰るよ。
・・・くそっ!誰だスペアキー取った奴。犯人が分かったときはぶっ殺してやる!
バンと壁をたたく音が聞こえてくる。若宮がカッとして壁を殴ったのだろう。

カシャン何かプラスチックのようなものが外れる音がした。僕は顔を上げた。

それは壁掛け電話だった。受話器は、まるでバンジージャンプをしたかのように地面すれすれまでぶら下がっている。海老原は受話器を取って、フックにかけ直した。
海老原、その電話、何だ?
僕は気だるそうに聞いた。
これ?さあな、内線電話かなんかじゃないか?
海老原もどうでもいいという感じで答える。
こんなことならスペアキー100個位作っておけばよかった・・・
若宮はバイクのことで頭がいっぱいのようだ。
帰りは俺のケツに乗っけてやろうか?
お前のバイクは50CCの原付だろうが!! 警察に見つかったらどうするんだ。
まぁ、そう怒るな。バイク本体が盗まれたわけじゃ無いんだから、謝れば卒業式の日にでも返してくれるんじゃないか?
俺なこの夏休みのツーリングで、バイクを乗り倒したいんだよ!!
卒業式までなんて待てるか!!
ぶつぶつと文句を言う若宮。よっぽど悔しいのだろう。もともとバイクなんかで来なければ良かったのに。自慢でもしたかったのだろうか?まあ、自業自得だろう。

その時、ステージ両端のスピーカーから放送が流れた。声は顧問の酒井先生だった。
ええ。小川弘樹。至急、男子寮事務室まで来なさい。繰り返す。小川弘樹。至急、男子寮事務室まで来なさい
僕は顔をしかめた。
弘樹。酒井大先生がお呼びだぞ
若宮が冷やかすように言った。何だろう・・・?

僕はゆっくりと立ち上がった。
弘樹、お前何かやらかしたのか?
武藤が立ち上がった僕を見上げて聞く。
何もしてない・・・と思うけど
思い当たることは何もない。しかし、いつもそうだが、酒井先生に呼び出される時はろくな事がない。
それだけはわかっている。
ひょっとして・・・ペンペンのことや盗難事件のことがバレたのかな?
塩崎が不安そうに言った。

酒井が知るわけないだろ
なあ、皆んなに相談なんだけど、やっぱりペンペンのこととか、酒井先生に報告したほうがいいんじゃないかなぁ?
塩崎が部員の顔色をうかがうようにして提案した。
バカ!それだけは絶対にやめとけ!
海老原が慌てて、身を乗り出した。
・・・どうしてだよ?
この事件のことが酒井にバレるということは、この合宿が終わることを意味するんだぞ。酒井は合宿を中止する口実ばかり考えているからな。せっかく説得したのがパーになっちゃうじゃねーか
いつになく語気鋭く言い放つ海老原。
でも・・・ペンペンは殺されたんだよ?

そんなことをする犯人がまた何かやらかすかもしれないじゃないか
フン。なにビビッてんだよ塩崎
若宮が鼻であしらう。
でも・・・やっぱり先生に報告したほうがいいと思う。

なんだか胸騒ぎがするんだよ。今回は殺されたのがペンペンだったけど、次は・・・
塩崎はそこまで言うと口を閉じた。
つまんねーこと言うなよ
おい弘樹。お前はどう考えてるんだよ?
若宮が突然、話を僕にふってきた。
つづく
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登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

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