41話 二人きりの密室

文字数 1,229文字

なんとかして、ここから出られないだろうか?

カギがかかった扉を開けるのは無理そうだ。僕は辺りを見回した。天井には何本もの鉄パイプがうねうねと蛇のように這っている。

外と通じている部分といえば・・・さっきの小窓だ!

小窓は少し高いところにある。ジャンプしても届きそうにない。僕は大きなハシゴを立て掛けて、登った。
この倉庫は坂を登った小さな丘の上にある。だから、小窓からは男子寮全体がよく見渡すことが出来た。

雨や風はさらに激しさを増しており、いよいよ台風上陸といったところか。ときおり、ピカッと光ったかと思うと、ゴロゴロと雷の音が響きわたる。
オーイ!誰かいないかー!閉じこめられているんだー!
僕は力の限り声を張り上げて助けを求めた。
オーイ!誰かいたら返事をしてくれーっ!
しかし、声は雨や風や雷の音でかき消され、返事は何も返ってこない。がむしゃらになって叫んでいると、ハシゴがぐらぐらと不安定に揺れだした。
わわ!危ないっ!
僕はハシゴから落ち、思い切りしりもちをついた。
大丈夫!?弘樹君!
鈴原が駆け寄ってきた。
うん・・・サイッテイだけどね
僕と鈴原は、お互いの泥だらけの姿を見て思わずくすくすと笑った。

それから2人は黙り込んでしまい、一言もしゃべらなくなった。

髪の毛が汗で肌に張り付く。倉庫は異様なほど湿度が高かった。

その中で、今までの出来事を追想してみる。考えてみれば、あのポケベルもおかしなものだった。

電話のない倉庫から、どうやってメッセージを送ったというのだ?

携帯を使ったのか?いや、携帯はこの場所は電波が届かない。

つまり、始めから塩崎はここにはいなかった。あの時は気が動転して、すっかり騙されてしまった。

誰があんなメッセージを入れたのだろうか?僕はさっきのポケベルをポケットから取り出した。


『イマチュウリンジョウヨコノソウコニイル』


いかにも塩崎が助けを求めているような文章だ。

ということは、塩崎がいなくなった事を知っている人物になる。・・・やはりバスケ部の誰かの仕業だろうか?

一体、何のために!?

今までに起きた事件の犯人がやったことなのだろうか?ぞっとする。ここに閉じこめられているのも、その犯人の罠にかかっているような気がした。

僕たちは、これからどうなるのだろう?鈴原は僕の横で、ぐったりとしている。僕は天井を見上げて、静かに目を閉じた。
・・・・・・・・・君
うとうとしかけていた僕の意識は現実に引き戻された。
何か言った?鈴原?
私たち、夏休みの間、ず~っと閉じこめられたままかな?
はは・・そんなことはないだろ・・
本当は僕も不安だった。
私たち、ひからびて死んじゃうのかも・・
鈴原は面白いことを言うなー。何バカなこと言ってるんだよ
鈴原はそれを聞いてけだるそうに微笑んだ。
どうした?元気ないな、鈴原
そうかな?
ああ
まぁ、この状況で元気があるってのもおかしいけど
あのね、弘樹君。若宮君って薬物乱用してるって知ってる?
え?なんて言った、今?
僕は突然の言葉にキョトンとした。
つづく
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登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

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