52話 警察の取り調べ

文字数 1,962文字

刑事・・・
その望月と呼ばれる男は、髪はボサボサで無精ひげも伸びきっている。

ネクタイはユルユルで、本当はネクタイなんか大嫌いだが、規則のために一応しているといった感じだ。

シャツもアイロンを掛けずにそのまま着たようで、ヨレヨレだった。

男は咳払いしてこう言った。
岡山警察の望月です。ずっと病院で待機させてもらってました。

簡単な取り調べに協力して下さい。もし、体調が悪くなければ。
はあ・・・(体調は最悪です!)
僕は気の抜けた返事をした。

刑事の大きな目の下には隈が出来ていた。睨まれると凄みがあった。
年は45歳ぐらいだろうか。
それから、他のみんなも個別に話を聞かせてもらったよね。

だけど、もう一度、確認のために事件前後の行動を話して下さい。
誰かが話してる時、事実と違うと思った時は発言してください。
私はどちらかの味方になったり、すぐに否定したりはしない。

ただ、話に耳を傾けるだけだ。いいですか?
えーっ、また話すのかよ
若宮が口をとがらせると、望月刑事はギロリと睨み付けた。
それじゃあ、君から話してもらおうか
え? 俺から・・・ですか?
若宮は怖気づいて急に敬語になった。

望月刑事は内ポケットから手帳とペンを取り出すと、いつでもどうぞと若宮に合図を送った。

若宮はしぶしぶ事件当日のことを話し始めた。
俺は合宿解散した後、3時のバスにプーやんと武藤の3人で帰った。

残りの弘樹や海老原やマネージャーが来なかったからどうしたのか気にはなったけど。

それよりおかしいと思ったのは、途中、武藤が急にバスを降りたんだ。

『今なら間に合う』とか、わけの分からないことを言って。
それを聞いて、望月刑事は武藤をチラッと見た。
・・・・・・
武藤は反論も肯定もせず、沈黙を守り続けた。
若宮君、続けて
2時間後、午後5時に岡山駅に到着して、俺は そのまま電車に乗って帰った。

家についたのは6時ぐらい。事件のことは翌日に学校からの電話で知った。
なる・・ほど。前に聞かせてもらった話から変わりはないね。

ありがとう。
望月刑事は確認するように手帳をめくった。
それでは次、プーやんこと、長野五郎君
ジュースを飲んでいたプーやんは、慌てて缶をテーブルに置いた。
ぼ、僕も3時のバスに乗って帰った。

5時に到着して駅に向かって歩いていたら、海老原とバッタリ会った。
プーやんがそう言うと、海老原もうなずいた。

そのことは、あの夜海老原からの電話で僕も知っている。

プーやんは続けた。
海老原の話では山からバイクで降りてきたらしい。

びしょ濡れだったのが笑えて、ちょうど駅前にプリクラがあったので記念に一緒に撮った。

後は1人で電車で帰った。
プリクラというのはこれのことだね?
望月刑事は、カバンからクリアファイルに入った赤・黄色・青のセロファンのようなものを取り出して見せた。
何ですか、それ?
僕はおそるおそる聞いてみた。
プリクラの機械の中に設置されているインクリボンだ。

最新式のプリクラはインクジェットで印刷するんだが、少し古いタイプのものだとこういう3色のインクリボンをつかって印刷するんだ。

この方法で印刷されるとインクリボンに写真の跡が残る。

君らもカーボン紙って知ってるよね? 配送の伝票などに使われている。
ボールペンで住所を書いたりしたら、すぐ下にある紙に君らの筆跡がそのまま複製されるやつ。

あれは1枚目の紙の裏に特殊なインクが塗布されていて、強い力や熱を加えられると、下の紙にインクが移るんだ。

この手に持ってるインクリボンは、伝票の下の紙みたいなもんだな。
よく見ると、赤・黄色・青のそれぞれのインクリボンには、クッキリとプーやんと海老原のツーショットが写り込んでいる。

海老原が嫌そうな顔をしているのがおかしい。
プリクラのインクリボンには、撮影された日付と時間が同時に印刷されるんだよ。

つまり、プーやんくんと海老原くんは偶然だけど、証言に裏付けがとれたことになる。
望月刑事はプリクラのインクリボンをカバンにしまった。
じゃあ、一緒にプリクラを撮った海老原君の話を聞かせてもうおうか?
僕は、みんなバスで帰る中、1人だけバイクで帰りました。
大雨の中だったから、ちょっと危なかったけど。

夏休みのバイトで、どうしてもバイクが必要だったので、意地になって家に持って帰ることにしたんです。

3時に学校を出て、5時ごろ岡山駅について、ぶらぶらしていたら、プーやんとバッタリ会い、プリクラを撮らされました。

服が濡れていたので、早く家に帰りたいと思い、またバイクに乗って・・・
到着したのは夕方の6時ぐらいです。

プーやんにバスに弘樹と鈴原が乗ってなかったことを聞いたので気になって、学校の男子寮の事務室に電話しました。

もしかしたら、バスケ部顧問の酒井先生がいるかもと思って。

そしたら、どういうわけか弘樹が電話に出たんです。
つづく
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登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

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