44話 外界との電話

文字数 1,136文字

僕は1階の談話室のカギが壊れていて、中に入れることを思い出した。カギの壊れた窓は、少し高いところにある。
僕が馬になって鈴原を先に中に入れると、あとは案外簡単に中に入ることが出来た。
男子寮の中は、電気がついていないのでとても暗く、静かだ。歩くたびに足音が廊下に響く。
事務室に入ると、僕はとりあえず電気をつけた。

室内が明るくなり、少しホッとする。

シャワー室にバスタオルがあったので、僕たちはそれで濡れた体を拭くことにした。
それにしても、えらい目にあったなあ
風邪ひきそう
鈴原はクシュンと小さくくしゃみをした。
みんなもう帰っちゃったのかなぁ
僕はつぶやくように言った。
人の気配がしないから、きっと私たち2人だけだね
ひょっとしたら、心配しているかも。塩崎だけじゃなくて、僕らも消えたから
そうだよ、電話して無事なことを伝えなきゃ
そうだな
僕は鈴原に言われて、受話器に手を伸ばした。

まず、誰に電話をしようか?

僕は武藤に電話をしようと思い、受話器を上げた。以前、武藤には何度か電話をかけたことがあるので、番号は知っている。
ハイ武藤ですが・・・
受話器からする声は女の人だった。きっと声からして武藤のお母さんだろう。
あのう、バスケ部の小川弘樹と言いますけど
えっ、弘樹君!?みんな心配してたのよ!?
僕は今まで閉じこめられていたことや、バスがないし、この天気じゃ誰も迎えに来れないだろうから、一晩寮に泊まって、あした朝一のバスに乗って帰ることなどを伝えた。

しかし、もっと驚かされることをお母さんに聞かされた。
実はね、純一もまだ帰ってきてないのよ。

弘樹君と一緒じゃなかったの!?
いえ、一緒なのは鈴原さんとだけですけど・・・
武藤も家に帰っていないのか!?

いったい、どういうことなんだろう。また話がややこしくなってきたぞ。
お友達の話によるとね、純一は途中までバスに乗っていたんだけど、急にバスを降りたらしいのよ。

『今なら間に合う』とか
『ちょっと気になることがあって』なんて

わけの分からないことを言って
そのバスって3時のバスですかね?
そうみたいだけど・・・塩崎君って子がいなくなったんでしょう?

それに弘樹君とマネージャーさんも消えたって言うからビックリして
僕たちも寮にいないか探してみます
そう?あの子ったらどこに行っちゃったのかしら? 本当に皆さんに心配かけさせて・・・
僕は興奮が冷めないまま受話器を置いた。
弘樹君、どうしたって?
武藤もまだ家に帰っていないらしい
武藤君が!?じゃあ、倉庫から見えたあの人影は・・・
やっぱり武藤だったのか!?
でも、男子寮は電気がついていないし、どこにいるんだろう?
さあ・・・
2人は黙り込んでしまった。突然、電話が鳴り響き、僕と鈴原は体をビクッと震わせた。
誰からだろう・・・
つづく
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登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

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