38話 謎のポケベル

文字数 1,246文字

バイクも何も、カギがねーだろ。海老原はあのボロ原付で帰るのか?
ああ。あれがないと夏休み、ずっと不便だからな
チクショウ、誰がスペアキーを盗ったんだ!?
こんなことなら、スペアキーをオリジナルキーの横においておくんじゃなかった。
若宮はドンドンと畳を殴りつける。ふと、武藤を見ると、難しい顔をしている。
武藤、どうしたんだ?怖い顔して
え?ちょっと考え事
そう言うと、武藤はメガネをキラリと光らせた。
グジグジ言ってても仕方がない。もう時間もないし、各自、部屋に戻って帰り支度をしよう
海老原がみんなにそう言うと、それぞれが自分の部屋に戻っていった。僕も続いて集会室を出た。
集会室を出ると、ラウンジの隅に設置してある、緑電話の所で、プーやんが電話をかけていた。
プーやん、誰に電話しているんだ?
わ、びっくりした。弘樹か。合宿が終わって家に帰ることをお、お母さんに連絡したんだよ・・・
プーやんはテレホンカードを抜き取って答えた。
そうか。じゃあ、またバス停で会おうな
僕はそう言うと、2階へ上がっていった。
部屋に戻ると、さっそく帰りの準備に取りかかる。時間がないので、服などはたたまずにそのまま丸めてバッグに放り込んだ。

ふと、ポケットに膨らみを感じた。手を入れると、さっきの懐中電灯だ。
これはここに置いておくか
僕は懐中電灯を取り出すと、枕元にもどした。

しかし、どうしてこんな事になってしまったのだろうか?僕たちは、合宿をして、ただバスケがうまくなりたかっただけなのに。

こんな様々な事件が起こるなんて、夢にも思わなかった。この合宿で僕たちが失ったものは大きい。ペンペン、CDプレイヤー、塩崎勇次。・・・

塩崎を失うなんて考えるのは不謹慎だった。きっと、何かの事故に巻き込まれて、今は僕らの前に姿を現せないだけなんだ。いつかひょっこりと出てくるに違いない。きっとそうだ。そうなるに決まってる。決まってる

・・・・・・・・・・・・・・

僕がいけないんだ。自己嫌悪に陥る。昨日の夜、塩崎と部屋を交代してもらったばっかりにこんな事になってしまった。

あの時、交代なんかしなければよかった。だけど、今更そんなことを言っても何もならない。ただ塩崎の無事を祈るしかないのだ。

外を見ると、台風の影響なのか、ぽつぽつと雨が降り出している。風も先ほどよりもずっと強くなり、窓ガラスを震わせている。木々もザワザワとと大きく揺れ、とても不気味だ。
何の音だ?
突然、どこからともなくピーピーと電子音が鳴った。枕をどけると、ポケベルが音を鳴らしていた。
こんな所にどうしてポケベルがあるんだろう?
ポケベルを拾う。その裏にはプリクラが貼ってあった。塩崎が写っている。
塩崎の・・・ポケベル!?
どうして塩崎のポケベルが僕のベッドの上に落ちているんだ?音が鳴ったということは、メッセージが入ったということだ。僕は慌てて液晶画面を見た。
『イマチュウリンジョウヨコノソウコニイル』
今、駐輪場横の倉庫にいる!?どういうことだ!?どうしてそんなところに塩崎がいるんだ!?
つづく
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登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

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