33話 失踪事件

文字数 1,588文字

起きろ、起きろって・・・フン、まったく・・・
ふにゃ?
僕は寝ぼけた声をだした。
起きろよ
何だよぉ・・・プーやんじゃないか
チラリと時計を見ると9時をすぎている。朝食の時間は、とっくにすぎていた。練習までは時間があるし、こうなったらもう、二度寝するしかない。
あと5分だけ。な、プーやん・・・
フン、本当にお気楽な奴だな。塩崎の奴が消えちまったっていうのに
え!?
僕はガバッと身体を起こした。プーやんは向いのベッドに腰掛けていた。
塩崎が消えたって、どういうことだよ!?
一気に眠気が吹き飛んだ。
言葉のまんまだよ。この寮から消えたんだ
いなくなったって・・・どこかへ行ったってことか?
フン、分かるわけないだろ。弘樹も早く起きて、探すの手伝えよ。いつまでもグーグーと寝やがって・・・
プーやんの話によると、朝食の時、僕と塩崎だけがやって来なかったそうだ。

様子を見に来た海老原は、塩崎の部屋で寝ている僕だけを発見し、塩崎はどこにもいなかったそうだ。

織田切君の話だと、起きたときには部屋には初めから塩崎はいなかったそうだ。

しばらく部員だけで必死に塩崎の行方を捜した。神隠しにあったように塩崎は姿を消してしまい、見つけることは出来なかった。

こうなったら、もうバスケの練習どころではなくなった。さすがにこの事を顧問の酒井先生に黙っておくわけにもいかず、この事を伝えることにした。

そして、僕たちは体育館に集められた。
酒井先生は、終始落ち着きがなく、イライラとしている様子だった。鍵のついたキーホルダーをチャラチャラと手の上で音を立てていた。
塩崎がいなくなったって、どういうことだ!

話によれば、お前らの飼ってた犬も殺されてたそうだな。その上、盗難事件も起こってたらしいじゃないか。

お前ら一体どうなってるんだ!!
酒井先生は一気にまくし立てた。
だから先生はこんな合宿は嫌だと言ったんだ!
部員のみんなは、顔を下に向けたまま何も言えない。
とにかく今からもう一度、全員で手分けして探すんだ。いいなっ!
そう言い残すと、酒井先生は、ぶつぶつと何か言いながら、どこかへ行ってしまった。残された部員たち。
どこ行ったんだろう、塩崎の奴。弘樹、だいたいどうしてお前と塩崎は部屋を交代したんだよ?
海老原が責めるように僕に言った。
うーんと、実は昨晩・・・
仕方なく僕は、織田切君に起こった昨晩の出来事をみんなに正直に話した。
またあいつか。事あるごとに名前が上がるな、織田切って奴は
若宮があきれた顔をした。
でも織田切君は、寝ていて何も覚えてないんでしょう?
鈴原がフォローを入れる。
ああ、プーやんが言うにはな。そうなんだろ、プーやん?
僕はプーやんを見て言った。
フン、あいつの言うことなんか信用できるか。さっき、帰り支度をしてたしな
プーやんが答えると、みんなどよめいた。
帰り支度?じゃあ、あいつ、もう帰るのか?
どうして急に帰ろうとするのかな?
鈴原が不思議そうな顔をして言った。
あいつ、何か隠してるんじゃないのか?
隠してるって、塩崎君のこと?
さあ・・・それは分からないけど。でも、とにかくあいつは怪しい
若宮はため息をついた。
塩崎、どこへ行ったんだろうなぁ?ひょっとして、寮を抜け出して街に降りたのかな?
僕は、昨日の夜の塩崎を思い出しながら言った。ラーメンを食べていた塩崎。今頃、どこで何をしているのだろう。
街に降りた?ここから歩いていけば、10時間はかかるんだよ?あ、だいたい塩崎君の靴は下駄箱にあるの?
と、思いつくまま言葉にする鈴原。
そんなこと俺に言われてもわかんないよ
あいつ、本当に何考えてるんだ。みんなに心配かけて
海老原はイライラした様子だ。
よし。とにかくその辺もふまえて今からみんなで塩崎を捜そう。俺たちが今できる事っていったら、周辺を探すことぐらいだからな
わかった
みんなは返事をすると、おのおのが塩崎を捜すために体育館を出ていった。
つづく
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登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

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