15話 疑心暗鬼

文字数 1,279文字

震える手に、グッと力を込める。片手ではなかなか開かず、僕は両手で開けようと試みた。一度開くと、後はドアの重さで開かれていった。

何か重たいものが地面に落ちた。それは汚れた雑巾・・・のような、見るも無惨なペンペンの死体だった。
・・・・・・・・・・・!!!!
う、うわっ!
思わず僕は声を上げた。ぺ、ペンペン!? ペンペンなのか? どうして!? なにが起こったんだ!? 僕はパニックに陥った。
殺されてる・・・!!
いつも冷静な武藤が大きな声で叫んだ。
え!?
殺されたんだよ!見ろよ、ナイフみたいなものでめった刺しにされている
僕は武藤に言われて、ペンペンの体をじっくりと見た。

確かに、無数の傷口がパックリと口を開けている。その傷口からはぬるっとゼリー状に固まった血と、まだ固まりきれていない血が混じって静かに流れていた。

刺されてから時間がたっているのかもしれない。血を求めた虫達がその周辺で蠢いている。どの虫も今まで見たことがない種類だった。
うえっ
吐き気をもよおし、僕は必死にそれを押さえようと手を口に当てた。殺された!?

ペンペンが殺された!?誰に!?


どうしたんだ!
騒ぎを聞きつけて、他のみんなも集まってきた。

こうして合宿中、盗難事件に続き、第2の事件が発生した

。僕たちは、ペンペンの死体をとりあえず、廊下に引きずり出した。

そして、そのまま食堂へ向かった。朝食を用意してくれている鈴原をほっとくわけにはいかないからだ。
おはよう!・・・どうしたの暗い顔して?
・・・・・・
鈴原はすぐに僕たちの表情に気がつき、僕らは鈴原にペンペンの死を告げた。
嘘でしょ・・・?
鈴原の問いに答える者は誰もいなかった。

いつになく重い空気の朝食。誰もが黙ったまま、ただフォークやナイフの音だけがカチャカチャと響いていた。

しかし、ほとんどの者が食欲を失っていて一口、二口食べると、その手を止めてしまった。朝食を用意してくれた鈴原には申し訳ない。

みんな、ペンペンが死んだということよりも、誰かに殺されていたという事実の方がショックだった。

しばらくして、ようやくマネージャーの鈴原あゆみが口を開いた。
ペンペン、どうするの?
あの犬をどうこうするよりも、まず犯人探しが先だろ
若宮が鈴原の言葉を遮るようにして言った。
犯人って、お前なぁ・・・
海老原も、あの傷口を見ただろう? どう考えても、誰かが刺し殺したんだよ
若宮の言葉を聞いて、みんなふたたび黙り込んだ。

・・・・・・・・
ねぇ・・誰が・・殺したの?
塩崎がふと、つぶやいた。
そんな・・・!?
僕は驚いた。いつも静かな塩崎勇次が、まるで、この中に犯人がいるとでも言っているようなのだ。
お前、俺たちの中に犯人がいるとでも言うのかよ!
若宮が容疑者の一人にされた事で顔を真っ赤にして怒鳴った。
だ、だって・・・今はこの寮には俺達しかいないんだよ?
そ、それはそうだけどよ・・・
若宮も反論できない。

・・・昨日と同じだった。物を盗られたが、その犯人もいまだに分かっていない。

今回の事件も同一犯なのだろうか?ますます頭が痛くなる。楽しいはずの合宿が、こんな事になってしまうなんて。
つづく
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登場人物紹介

「小川弘樹」

主人公。密かに鈴原あゆみに恋してる普通の高校生。でも鈴原が好きな事はみんなにバレバレ。鈴原が近いと少し声が大きくなるからだ。

最近、ワックスは髪型を自由に変えられる魔法の練り物だと思ってる。

「鈴原あゆみ」

バスケ部のマネージャー。とにかく明るくて、いつも笑顔を絶やさない。
明るすぎて悩み無用と思われてる。そんなわけないでしょ! と一応怒った事もある。
弘樹は怒った顔も可愛いと思った。

「海老原さとる」

バスケ部キャプテン。力強くみんなを引っ張っていく。多少強引なところもある。

あまり女の子の話とかしないので部員に疑われた事もあるが、普通に女の子が好き。らしい。

「武藤純一」

文武両道で、バスケもうまく、頭脳明晰。優しく、皆が熱くなった時も冷静に答えを導こうとする。殴られたら殴り返す男らしい一面も。

いつもメガネがキラリと光る。人の3倍くらい光る。風呂に入る時もメガネをつけるので、体の一部と言われている。横顔になるとメガネのフレームの一部が消えたりはしない。

メガネが外れると3みたいな目になる。

「若宮亮太」

ヤンチャな性格で、言いたい事はズバズバ言う。プーやんをいつもいじってる。背が少し低い。そこに触れると激怒するのでみんな黙っている。

「人をいじっていいのは、逆にいじられても怒らないこと、お笑いの信頼関係が構築されてることが条件だ」と武藤に冷静に指摘されたが、その時も怒った。

沸点が低い。というより液体そのものが揮発してる。

いつもプーヤンをいじってるが、格ゲーでボコられてる。すぐにコントローラーを投げるのでプーヤンにシリコンカバーを装着させられてる。

怖い話とか大好き。

「長野五郎」

略してプーやん。いや、略せてないけど、なぜかプーやんと呼ばれてる。いつも減らず口ばかり叩いてる。若宮にいじられながらも一緒にゲームしたりと仲が良いのか悪いのか謎。ゲームとアニメ大好き。犬好き。

将来の夢はゲームクリエイター。意外と才能あるのだが、恥ずかしいのか黙っている。

エクセルのマクロを少し扱えるので、自分はハッカーの素質があると言った時は武藤にエクセルを閉じられなくするマクロを組まれた。

「塩崎勇次」

おっとりした性格で、人からの頼みは断れない。心配性。
心配しすぎて胃が痛くなる事も多く、胃薬を持ち歩いている。

キャベツは胃に良い、だからキャベジンはキャベジンって言うんだよ、というエピソードを3回くらい部員にしてる。

黒いシルエット。それはが誰なのか、男なのか女なのか、しかし、人である事は確か、という表現ができる。少なくとも猫ではない。

だいたい影に隠れて主人公たちを見てニヤリと笑い、だいたい悪いことをする。
この作品では初っ端からアクティブに大暴れしてる。

酒井先生。バスケ部の顧問だが、スポーツに関する知識はない。

奥さんの出産が近いため、そわそわしている。

織田切努(おだぎり つとむ)。謎の転校生。

夏休みで、寮に慣れるためにやってきたらしい。 

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